なぜユニクロは批判されても売れ続けるのか アパレル業界を知り尽くした男が見た真実

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ただ、社長室長が変わっても個々の商品が良くなるようなことはありえません。筆者の知る限りでは、同社へ転身をはかる本部の幹部クラスは、いわゆる小売業やサービス業出身の同業系の人材は少なく、あくまでも企業全体の経営面で明るいひとが多いようです。ところが実はこの10年近くの間に現場責任者といわれているベテランが次つぎとファーストリテイリングへの移籍をしているのです。しかもみな優秀といわれる方たちばかりでした。

筆者の前職の商品企画室勤務のころに良く交わされた会話です。

「大ナギさん、ボタンダウンシャツどこで買っているの?」

「○○ブランドか、△△ブランドかな…」

「そうなんだ、でもこれからはユニクロがいいよ。□□(ボタンダウンシャツ製作に関しては世界的に有名なブランド)から一番ベテランの責任者が移籍したから」

優秀な人材を得て製品がどんどん進化

時を待たずして、同社のボタンダウンシャツが進化していったのは言うまでもありません。優秀な技術者の移籍事例はジーンズやチノパンツでもみられました。これらが、どんどん進化していっていることに気がついた人も少なくないかもしれません。特にジーンズにおいては、その素材開発や、デザイン、縫製、価格などの進化に対して他の名だたるジーンズメーカーが目の色を変えて対応せざるをえない状況だったのは記憶に新しいはずです。

どこからも正確な数字は算定できないということになっていますが、日本におけるジーンズの年間販売数量は8000万~9000万本といわれています。そのうち最低1000万~1200万本はユニクロの商品ですから7~8本に1本はユニクロの商品が占めていることになります。

消費者にとって一番良いものを提供するというトップからの強い信念と熱い指示が内外にいきわたっていても、それを具現化するのは人材。それも外部から加入した新たな血が商品をさらに進化させているという好例です。

③専門家による冷静な分析

筆者自身は昨年サラリーマンを卒業してからは、それまで以上にファッション業界に関わる機会が増えてきました。アパレル企業の経営者やファッション誌の編集長、ファッションエディターと呼ばれている方たち。いわゆるファッションにうるさいといわれている方たちとの関わりです。そんなひとが大勢集まるメンズファッション協会での会話の一コマです。

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