マツダ「CX-60」今あえてFRを採用する巧妙な意図 直6ディーゼルも新規開発したマツダの戦略

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具体的な燃費値については、プロトタイプであることから今回は公表されなかったが、「(現行マツダ車の)B/Cセグメントと同等かそれ以上」というから、WLTCモードで20km/L前後を実現しているだろう。

「なぜディーゼルなのか」については、「原油から各種燃料が精製されるなかで、軽油(ディーゼル燃料)を有効活用することで(精製で生まれるさまざまな燃料を)しっかり使い切ることが重要だ」という観点を重視しているという。原油を精製すると必然的に軽油が生まれてしまうから、これを活用しようというわけだ。

変化の大きい世の中にどう対応するか

ここまで伝えてきたように、ラージ商品群への疑問に対してマツダは明確な答えを持っている。しかし、「サステイナブル“ZOOM-ZOOM”宣言2030」や「ビルティングブロック構想」は、いうなればオーソドックスな指標だ。一括での企画やモデルベース開発による開発効率化と社会情勢への対応力があることも、当然の流れとして理解できる。

では、2010年代後半から2020年代にかけてESG投資の嵐がグローバルで吹き荒れ、欧州グリーンディール政策のように政治的な動きが一気に高まっている時代の局面を、マツダはどう捉えているのだろうか。

ラージ商品群について説明する、専務執行役員の廣瀬一郎氏(筆者撮影)

こうした筆者の問いに、廣瀬氏は次のように答えた。

「ご指摘の通り、ESG投資案件に見られるように、世の中は日替わりで変化しており、適用要件が前提として多く加わっている。たしかに我々の考え方は、オーソドックスだ。それは、ある期間を我慢して資産を作り、それを土台に次のステップに上がる(というビルディングブロック戦略)というものだ。このステップを(できるだけ)早く回すことしかない。そして、モデルベースやAI(人工知能)と、その領域で従事できる人材育成を進めて、(ステップの循環を)加速させる。さらに、共通の志を持つ企業や大学などと、(技術の)一部を共同で対応する」

マツダという企業を長年にわたり近くで見てきた身として、今回のラージ商品群技術フォーラムで改めてマツダらしさを痛感した。物事を真正面から捉えて、地道で着実に進む。そうした思いが、経営陣から従業員まで一貫している。

そうしたマツダらしさに対して、市場はどう反応するのか。これからもマツダの動向を、現場目線で追っていきたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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