ソニーが復活するための「2つの条件」 それでも支持する消費者に応えられるか?

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ソニーは12月末、オンラインでのレンタル・販売や、500館超の小劇場での限定公開を決定し、批判を逃れた。

「『ジ・インタビュー』は独創的な映画だ。社員とパートナーたちは、卑劣なハッカーの攻撃に立ち向かい、この映画をファンに送り届けた。彼らを誇りに思う」

平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は、CESに先立つ記者会見の冒頭にこう述べた。

ハイテクニュース専門サイト「CNET」総合編集長のティム・スティーブンス(36)は、「カズ(平井社長)が出て来るのが1カ月遅すぎた」と指摘する。

「ハッカー攻撃については、もっとリーダーシップを発揮してほしかった。米国人は、コミュニケーションを重んじる。こういう時は、真っ先にカズが出てきて、被害の程度や今後の方針を説明しなくてはならない。記者会見での発言も不十分だ」

実際にSPEは、ハッカーが映画を公開する映画館の攻撃をほのめかした際、「公開するかどうかは映画館が判断することだ」と丸投げした。

なぜか根強いソニー製品信仰

リーダーシップの欠如や消費者とのコミュニケーション不足は、米国では、株価に直接響く大きな不祥事だ。

「ソニーは間違いを起こした」

と、オバマ米大統領は年末の記者会見で発言した。大統領が、一民間企業の固有名詞を記者会見でこんなに連呼したのは、2009年、オバマ政権が経営破綻したゼネラル・モーターズ(GM)など自動車メーカー2社を救済した時以来、あまり記憶にない。

消費者もジャーナリストも、ソニーにかなり失望したのは間違いない。ハッカー攻撃の直後、株価は2ドル超急落した。

しかし、ソニー製品への「信仰」はなぜか根強い。

カナダのテレビ局ICI―エクスプロラのハイテク担当ジャーナリスト、ジャン・ミシェル・バナス(31)は、小さい頃から、ソニーのテレビで育った。以来、ほかのメーカーのテレビを買ったことはなく、3カ月前にもソニーの「ブラビア」を買ったばかり。

「ハッカーの事件は取り返しがつかないダメージとなったが、ブラビアを買ったことは後悔していない。テレビ売り場で、明らかにほかのテレビが見劣りした。今回の展示でも、スマートフォンや、カメラレンズの出来も、美しくてすばらしい」

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