「女性向けポルノ」に見る男性の「独りよがり」

男性の自己満足が「セックスレス大国・日本」を生む?

前ページの末尾を読み飛ばしてしまった人がいるかもしれませんので、再度、注意喚起をしておきましょう。このページの次からの9段落(青文字部分)では、ポルノグラフィーについて解説する必要上、性的に露骨な表現が含まれます。そういった表現を読みたくない方は、次の9段落を読まず、「3ページ目(青文字部分)の分析をまとめると、以下のようになります。」まで飛んでください

ポルノグラフィー:男性向けと女性向けの違い

それでは、具体的に両者を比較していきましょう。

いちばん大きな違いは、男性向けの商品では女性がつねに喜んでいる、もしくは嫌がっていたとしても最終的には喜んでいる、というストーリーに落とし込まれているのに対して、女性向けの商品では、女性の側からの独白がある点です。セックスのシーンを描いて「あぁぁ~」などと女性があえいでいる同じコマに、「そのころから彼とのセックスにも満足できなくなり……」といったト書きが入っているのです。

男性向けのポルノグラフィーというのは、いかに独りよがりの筋書きなのかを象徴するもののように思えました。感じているふりをしつつ、冷めたト書きを加えることによって、女性はこのセックスに別の意味づけを与えています。一方で、男性はその感じている「ふり」にしか反応していないことになります。

この「感じているふり」というのは、レディースコミックに限らず、多くの女性誌の中で古典的なネタといえるものです。それこそ専業主婦にとっては、「夜のお勤め」と呼ばれ、ある種の「義務」だと考えられた時期もあるほどで、『婦人公論』のようなメジャーな雑誌でもしばしば取り上げられるテーマです。女性側からの(「男性に聞こえている声とは違う」という意味で)「無言」の異議申し立てであり、かつ主体性を構築する作業だということができます。

今の若い世代の女性にとって、さすがに「夜のお勤め」や「義務」という感覚は薄いでしょう。だからこそ、自分の性を自分で定義したいという動きが出てくることになります。エロメンなどと呼ばれる、女性向けポルノグラフィーの流通・発達は、そのひとつの表れだと考えることができます。

女性向けのポルノグラフィー、現在は女性向けのAVサイトがあり、匿名で購入できることもあって、それらが中心になっています。一方、その手前に、ポルノグラフィーの体裁を取らない、女性向けの性の商品の入門編のようなものがあります。普及度という意味では、『an・an』(マガジンハウス)の性の特集号がいちばん影響力のあるものかもしれません。確実に部数が取れるようで、毎年、特集で出ています。

これもDVD付きなので、見てみました。かつてのマッチョなAV男優とは異なり、アイドルのような華奢できれいな男性が相手役となっており、「ケンカのあとで。」や「出勤前の彼。」といったシチュエーションをバックに、男性向けのものに比べるとはるかにゆっくりと感情の高まりを確認するようにして、描写が進んでいきます。

まず「なるほど」と感心したのが、コンドームをつける場面が描かれている。男性向けでも現場ではもちろん、原則としてコンドームは使われています。しかし、それこそ性器の描写が禁じられているために、実際につけるシーンは描かれていません。ですが、女性にとって「安全なセックス」という意味では、コンドームは必需品です。それをきちんと描いているということに、感心してしまった自分自身を恥ずかしいと思いました。そのくらい当然のことすら、男性向けの商品はすっ飛ばしているのです。

次に印象的だったのが、キスの頻度です。体のいろんなところへのキスが、実に丁寧に積み重ねられます。挿入が目的なのではなく、そこに至るまでのスキンシップそのものの重要性がよく伝わってきました。当然ですが、最後に精液を顔にかけるといった馬鹿げた行為は行われません。あれはもちろん、男性向けの商品固有の「達したことを証明する儀式」のようなものなのですが、本当にあんなことをすると考える若い人がいるとなると、冗談にはなりません。

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