「腹式呼吸=健康」と盲信する人に欠けている視点 「胸式呼吸が悪い呼吸」という理解は間違い

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皆さんご存じの通り、呼吸には「胸式呼吸」と「腹式呼吸」があります。

①腹式呼吸の動きを司る「横隔膜」

②胸式呼吸の動きを司る「肋間筋」

まずは、二つの呼吸法の特徴をご紹介します。

①主役が横隔膜の「腹式呼吸」

横隔膜というと、その名前から膜のようなものを想像しがちですが、胸(胸腔)とお腹(腹腔)の間にある、ドーム状の形をした筋肉で、平均で3~5mmの厚さです。脂肪や膜(2枚)を合わせると、2cmにもなります。

焼肉でいうサガリ(マッチョ)とか、ハラミ(細マッチョ)にあたる部分で、確かに膜というよりもしっかりしたお肉です。

腹式呼吸では横隔膜が主役を務めます。わき役に肋間筋、腹筋群、骨盤底筋群など他の呼吸も動きます。力持ちの横隔膜ですが、動きはごくシンプルな上下運動だけです。そのため酸素消費量も少なく済み、その分全身への酸素供給量が増えます。全身の酸素量が足りていれば、呼吸数も少なくて済むので、体も疲れにくいという好循環環境を実現、つまりコスパのよい呼吸法なのです。

さらに、横隔膜には自律神経がたくさん集まっています。自律神経は基本的に、自分の意思でコントロールすることはできませんが、唯一、呼吸を通してだけ整えることができるといわれています。横隔膜を積極的に動かすことで自律神経の束を刺激し、副交感神経を優位にして体を安定した状態に導きます。

「肩の力を抜く」「腹を据える」という言葉があるように、緊張や興奮を鎮め冷静になるために、昔から自然に行われてきたのが腹式呼吸です。

と、このように書くといいことばかりのようですが、腹式呼吸だけをしすぎると内臓が下がるとも言われています。何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし、ですね。

(イラスト:あかませいこ)
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