日本人が無意識に「呼吸の異常」に陥る背景事情 過度のストレスや不規則な生活がもたらす影響

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呼吸が浅く、速くなってしまう理由として、

①自律神経の乱れによる心身の緊張状態の持続

②スマホやパソコン作業による長時間の前かがみ姿勢

③マスク生活での不快感、閉塞感、息苦しさから来る口呼吸

などが、主に考えられます。

過度のストレスや不規則な生活は、自律神経のバランスを崩し、呼吸が乱れる原因となるのです。

自律神経は生命維持に欠かせない、呼吸、血液循環、体温調節などを司る神経です。体の働きを促す交感神経と、休ませる副交感神経から成り、自然に私たちの体を守ってくれています。

長時間のデスクワークがもたらす影響

人はストレスに直面すると、それに対抗しようと交感神経が優位な状態となり、肩や首の筋肉が緊張するため呼吸筋が拘縮し、比較的ラクに空気を吸える胸を使った呼吸や口呼吸を優先するようになります。

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  • イライラを鎮めようと大きなため息を何度もつく。
  • 落ち着こうとして、大きな呼吸を何度もする。
  • いつの間にか口を開けている。

このようなときは、だいたい口と胸を使った呼吸で、換気をしすぎている状態です。これらはすべて、息を「吐き切る」ことが苦手で、肺の中にいつも空気が残っているため、浅い呼吸しかできなくなります。浅くしか吐けないので、次の息をすぐ吸いたくなり、速い呼吸になってしまうという悪循環に陥っているのが呼吸過多です。

また、長時間のデスクワークや緊張状態がまねく猫背や巻き肩、スマホ首や反り腰、脚組みなどは、骨格をゆがませ、呼吸機能にまで影響を与えることがよく知られています。

呼吸というのは、単に空気中の酸素を取り込みやすいのか、そうでないのかだけでなく、姿勢や体型、心身の健康状態にまで影響を与えていることがわかります。呼吸は、体、心、脳と、切っても切れない関係にあるのです。

奥仲 哲弥 山王病院副院長

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おくなか てつや / Tetsuya Okunaka

1959年埼玉県生まれ。東京医科大学卒業。医学博士。山王病院副院長、呼吸器センター長。禁煙の活動に積極的に関わり、関連書籍も多数あり。小学生や高校生の子どもを持つ父親を対象にした禁煙啓蒙活動も行っている。専門は肺がんの外科治療。「サンデージャポン」(TBS)などテレビでも活躍中。

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