「京王ズ」上場廃止危機、光通信はどう動く? 不正会計が解決せず、タイムリミットに

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疑義の対象になっている期間は、2011年8月から直近まで。京王ズはその2011年8月に、上場前から創業者による会社資産の横領や粉飾が行われていたことが発覚。第三者委員会による調査を経て、過去5年分の本決算プラス2011年10月期第3四半期(2011年7月末時点)までの決算修正を、同年12月に行っている。

前回の決算修正対象期間の直後から現在までが今回の疑義の対象なので、第三者委員会の調査が入っている最中にも不正な会計処理は継続していたことになる。つまるところ、振り返ってみれば、この会社は上場以来現在に至るまでの約10年間に公表した決算に、1期たりとも真っ当なものはなかった、ということになる。

第三者委の勧告を無視、創業者への資金流出も継続

2011年11月に公表された第三者委員会報告書では、常勤監査役自らが不正に関与していたほか、社外取締役も創業者との個人的な関係が密接で経営監視機能が働いていなかったことを指摘した。

委員会設置会社への移行、独立性の高い社外役員を選任するための組織として社外有識者による人事委員会を設置することや、選任された社外役員に十分な社内情報が提供される体制構築、内部監査部門と監査役、会計監査人との連携強化、外部専門家が関与する内部通報制度の設置などを提言している。

この結果を受け、会社側は前述のとおり決算修正を行い、金融庁は4373万円の課徴金納付命令を出し、そして東京証券取引所は同社を特設市場注意銘柄に指定した。

特設市場注意銘柄とは、企業統治に問題があると判断した上場会社を証券取引所が指定する制度で、今年1月9日時点で京王ズを含めて5銘柄が指定を受けている。特設市場注意銘柄に指定されると、1年後に再度改善状況を記した報告書を提出、取引所が企業統治が正常化したと判断すれば指定解除になる。だが、正常化していないという判断が出ると指定が継続し、3年以内に指定解除を受けられなければ上場廃止になる。

京王ズの場合、東証は現在に至るまで、「内部管理体制について改善の必要性が高い」として指定解除に応じていない。というのも、第三者委の勧告のうち、会社側が実行したのは、社外監査役の増員やコンプライアンス委員会の設置などに限られ、不正に関与した役員の一部が子会社の従業員として残っていたり、創業者に対する不正流出金の回収も不十分だったりした。それどころか、追加貸付まで行っていたからだ。

上場廃止基準に該当する3年後の期日は1月19日。「15日までに必要な決算修正を行い、それをふまえて19日までに3度目の改善報告書を提出し、東証の判断を待つ」(同社法務広報課)ことになる。

今回の報告書で改善が認められなければ上場廃止になるというのに、報告書の提出期日を1カ月後に控えてのこのドタバタ。段取りの悪さは否めない。その最大の原因は、創業者が昨年5月まで、引き続き発行済み株式総数の約3割を保有する筆頭株主であり続けたために、会社が創業者の影響力を排除できなかったことにある。

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