阪神タイガース、「戦略転換」は吉と出るか 2014年はセ・リーグで唯一の観客数減

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球団首脳は「金子に関しては、もともと絶対うちにきてくれるとは思っていなかった。ただ球界を代表するあれだけのピッチャーだったから、参戦せざるを得なかった」とポーズを装うが、争奪戦を演じた「祭りの後」の「やせ我慢」にしか聞こえない。

最近の阪神はFA戦線で大物を獲得することによって優勝戦線に乗り出していた。他球団から金本知憲、新井貴浩、福留孝介らを補強しながらチーム強化を図って勝つこと、儲けることの両方の利潤を成し得てきたのだ。

FA完敗を期に、チーム強化戦略を転換へ

巨人同様、人気チームであるがゆえに、常に勝つことが期待されている。大観衆の前で気が抜けない。だからビッグネームで〝目玉〟を作りながら集客力を保ってきたわけだ。

かつての巨人が落合博満、清原和博、広沢克実、江藤智、工藤公康ら大型補強でチーム強化を図ってきた「いつか来た道」を、同じ名門の阪神もたどってきたわけだ。

しかし、一方で生え抜きが目立たなくなって、観客動員にも影響が見え隠れしている。昨季はセ・リーグで唯一のマイナスで、2013年比3%減の268万9593人(72試合、1試合平均は3万7355人)になった。他球団と比較しても高い動員数(全体では12球団中2位)ではあるが、気になる減少傾向といえる。

そこで球団は、チーム戦略における方向転換を迫られている。坂井信也オーナー(阪神電鉄会長)は「FA市場を期待するのがおかしいのかもしれない。無理矢理にFAでというのは考え直さなくてはならない」と語った。

他球団からFAで大物選手を獲得して上位進出を狙うより、自前の若手を育てて1軍の舞台に送り出す。つまりチーム強化法は「促成栽培」から「熟成栽培」にカジを切られる。

もっとも「勝ちながら育てる」というのは理想的でも、それはある意味、矛盾している。急がば回れ―。転換期を迎えた阪神に生え抜きが主力にそろったとき、猛虎は本物になる。

寺尾 博和 日刊スポーツ新聞社大阪本社編集委員

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てらお ひろかず / Hirokazu Terao

てらお・ひろかず 日刊スポーツ新聞社大阪本社編集委員。阪神、近鉄、南海、ダイエーなどを担当、野茂英雄のメジャー行きから現地に派遣される。2004年球界再編を取材、2008年北京五輪、09年WBCなど国際大会などで日本代表チームのキャップを務める。現在は主に東京五輪での野球ソフトボール復活を取材中。ミニストップ社とコラボでオリジナルスイーツ作り、オリジン社と弁当開発を手掛けて全国発売するなど、異色の名物スクープ国際派記者。大体大野球部出身。福井県あわら温泉生まれ。趣味はスポーツ、歌舞伎、舞台鑑賞。毎週木曜日にABC朝日放送「おはようコール」のコメンテーターとしてレギュラー出演。

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