5年後、トヨタ最大の敵はグーグルになる 競争領域の“高次元化”が止まらない!

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自動運転車の競争領域のシフトはこれだけにとどまらない。実は「自動運転」といっても2種類がある。

ひとつは、オートパイロット(Autopilot)と呼ばれるもので、飛行機のパイロットが離陸後に活用するような操縦支援をするものと考えてよいだろう。そしてもうひとつが、自律運転(Self-driving)と呼ばれる、搭乗者が運転にかかわることなく目的地に到着できるものだ。

前者はテスラが好んで使う概念であり、比較的近い将来の自動運転と考えてよい。後者は、グーグルが開発をしている自動運転技術であり、ハードウエアの開発だけではなく、そのハードウエアを運用するために必要な「システム」にまで取り組まなければ実現できないものだ。

自律運転の世界が実現する際には、競争領域は前出の図の②「ハードウエアの安全性」の競争から、③「システムの安全性」にシフトしているだろう。そしてそのシステムを確立するためには、システムを運用するためのインフラ整備だけではなく、ICTを活用してハードウエアを制御したり、そのハードウエアを運用したりするためのエネルギー調達が重要となってくる。

都市をデザインする必要性

つまり、自律運転を可能にする自動運転車が走り回るためには、「都市」をデザインしなければならないことになる。

こうしたデザインを実行することができる企業が、世界にはたして何社存在するであろうか。都市をデザインし、構築し、運用するためには、「資金調達」が競争優位を確立するうえで非常に重要となる。ハードウエアとしての自動車をつくることができればいい、という次元の話ではない。はたして、既存の自動車メーカーに、こうしたスケールの事業を運用することができるであろうか。

グーグルには、「Google X」のほかに、「Google Y」といわれるプロジェクトが存在しているようだ。グーグルのラリー・ペイジCEOは、超効率的な空港の建設に興味を示しているとも言われる。また、グーグル傘下のベンチャーキャピタルであるGoogle Venturesの投資先には、都市デザインにかかわる企業も含まれている。

このように自動運転車は、「都市」を舞台に、さまざまな産業を巻き込んで繰り広げられる、極めてスケールの大きな「異種格闘技戦」のきっかけになるはずだ。

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