候補人材のリスト「タレントプール」を作ろう 産業革新機構の取り組みに学ぶ

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だからこそ、成功事例を多く作ることが産業革新機構の目的でもあります。バイオベンチャーへの投資を成功させるのはもちろん、大手企業からベンチャーへ飛び込んでいく人材のロールモデルを作って人材の流動化を促進していくことも、産業革新機構の大切な役割のひとつです。

そんな産業革新機構が支援しているバイオベンチャーのひとつ、メガカリオンの最高執行責任者(COO)である赤松健一さんにも話を伺いました。

メガカリオンCOOの赤松健一さん

メガカリオンは、iPS細胞から血小板を作る技術を臨床応用し、輸血に依存しない血小板の提供を目指すバイオベンチャーです。

血液成分の一種である血小板は、現在、輸血治療に頼らざるを得ず、輸血用の血液は慢性的な不足状態に陥っています。また、医療途上国においては細菌やウイルスの二次感染リスクを排除できません。一方、iPS細胞由来の血小板製剤が実現すれば、感染リスクを排した血小板を安定的に供給することが可能になります。

メガカリオン社が医薬品開発や大量製造技術を確立するために必要な資金として、産業革新機構が10億円の出資を実行したのは、2013年8月。赤松健一さんがメガカリオン社に合流したのちのことでした。

大手製薬企業からライフサイエンスベンチャーへ

現在メガカリオン社の最高執行責任者(COO)として活躍中の赤松健一さんは、大手製薬会社から2013年に同社へ参画。大手製薬会社におけるバイオ医薬品の研究開発と製造に携わってきた経験を生かして活躍されています。

きっかけは、産業革新機構の芦田さんからの連絡でした。芦田さんは、そのときの様子をこう話します。

「産業革新機構がメガカリオン社の投資を検討している際に、メガカリオン社の成功のカギは製造技術開発にあるから、もし投資をするのならその技術開発を行う責任者が不可欠だと感じました。iPS細胞から医薬品を作って産業化している人は世界中にまだいませんから、それに近いバイオ医薬品の製造技術の開発経験者を探していったのです。日本にはあまり経験者がいない分野にも関わらず、充実した知見をお持ちである赤松さんこそ理想の責任者だと思いました」

一方の赤松さんは、「残りの人生を考えたとき、もう一度新しいことにチャレンジしたいという気持ちがあった」といいます。そんな折に産業革新機構からメガカリオン社の話を聞き、運命的なものを感じたそうです。

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