「わかる」と「納得する」には、大きな差がある 「生き物感覚」を失うことの恐ろしさ

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 これまで「和魂漢才」と「和魂洋才」で生きてきた日本人。グローバル化が急速に進む中で、日本人はあらためて「日本文明とは何か」「日本人とは何か」を問われている。これからの時代を生き抜くために、日本人に求められる教養とは何か――。 宗教学者の山折哲雄氏が、有識者との対談を通して、日本人の教養を探る。
 第6回目は、JT生命誌研究館の中村桂子館長との対談。前・中・後編に分けてお送りする。前編では、生命誌研究館設立の経緯、現在の取り組みについて語り合う。
 (企画協力:こころを育む総合フォーラム ※ 山折氏の後日談はこちら

「生命誌研究館」とは何をするところか

中村:本日は生命誌研究館にいらしていただいて、ありがとうございます。

山折:前からご案内いただいていましたが、今日初めて参りましてびっくりいたしました。人類発生以来の歴史の中で、生命というものをどう捉えるかという大変な研究をなさっている。なぜ生命誌研究館を始められたのですか。

中村:それをお話しすると長くなります(笑)。今、生命科学は非常に重要な分野になっていますが、始まったのは1970年代。米国がアポロ計画を成功させて、次の目標を「癌との闘い」とし、医学と生物学を合わせた生命科学にしました。

生物学は、人間以外の生き物が対象です。人間を考えることはありませんでした。でも医学となると、人間を研究することになります。「人間を考える」ことになったのです。

同じ年に、江上不二夫先生が、日本で生命科学研究所をお始めになり、私はそこで育ちました。江上先生の生命科学は独自で、植物学、動物学などと分かれていた生物学をDNAを基本において生命とは何かを問うものに変えたのです。ここにも人間が入ります。また当時の公害も関係します。

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