超重要!日本郵船と商船三井を分析する 世界経済の荒波に揺れる海運業の先行きは?

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海運業は、製造業と同様に、世界経済の好不況に大きく影響されます。その要素は2つあり、1つは船賃です。冒頭でも触れましたが、船賃は経済が低迷するとすぐに下落し、逆に好況時には上昇するのです。

もう1つ、船の値段自体も景気や資源の需給に敏感に反応します。例えば、原油価格などが下落すると、大型タンカーや中古船の価格が一気に下がることもあるのです。

海運業は、景気の波に左右されやすい

ですから、海運業の業績は、世界景気が落ち込むと、長い間赤字が続くこともあります。しかし、ひとたび好景気になりますと、一気に収益を確保できるのです。

国際競争も熾烈です。特に、船さえ持っていれば誰でも運べるようなコンテナや一般貨物のばら積みなどは差別化が難しい事業ですので、競争が非常に激しくなっています。

しかし、日本の海運会社の場合、自動車やLNGの運搬などについては長期契約をしていますので、ある程度、安定して収益を得られる部分があります。ただ、これらの運搬は専用船を使いますので、輸出量が減りますと、船が余ってしまって収益が悪化するというデメリットもあります。

このように、海運業は変動する要素がたくさんありますので、長期的に安定的な収益を得ることが結構難しいのです。このような事業の場合には、自己資本比率を比較的高めに保っておくことが大切です。

ただ、いくつかの注目ポイントがあると思います。まずは、企業の将来性を示す一つの指標である、設備投資の状況を見ることです。

これは海運業に限りませんが、会社の将来性を見る場合、私が真っ先に注目するのは、キャッシュフロー計算書にある「投資活動によるキャッシュフロー」のうち、設備投資が大半を占める「有形固定資産の取得による支出」です。これと「営業活動によるキャッシュフロー」にある「減価償却費」を比べます。

減価償却費と同じくらいの設備投資を行っていると、事業規模は現状維持されていると推測できますし、減価償却費を超える設備投資を行っていれば、積極的に事業を拡大しようとしていると分かるのです。

日本郵船の場合はどうでしょうか。キャッシュフロー計算書(12ページ参照)を見ると「有形及び無形固定資産の取得による支出」は、マイナス803億円。「減価償却費」は493億円ですから、同社は今、かなり積極的な投資を行っていると言えます。

同様に、商船三井(10ページ参照)も見てみますと、「有形及び無形固定資産の取得による支出」は618億円、「減価償却費」は409億円です。こちらも投資の方がはるかに大きくなっていますね。

次ページ2社とも何に積極投資をしているのか?
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