セミナーレポート

ワークプレイス・イノベーション・フォーラム2014 アイデアとコミュニケーションが生まれる未来志向のオフィス戦略とは

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経営戦略を実現する重要なファクターの一つという観点で、オフィスを改革する企業が増えている。オフィス改革は、業務の効率化やコストの削減はもちろんのこと、社内コミュニケーションの活性化や、社員の創造力向上にもつながると言われる。これからのオフィスはどうあるべきなのか、都市開発の中でどう位置づけられるのか、そもそもイノベーションとは何なのか。11月に東京で行われた「ワークプレイス・イノベーション・フォーラム2014」は、そうしたことに対する一つの方向性を示す示唆に富んだものとなった。

●共催:森ビル、東洋経済新報社

開会挨拶

森 賢明氏
森ビル
執行役員
オフィス事業部統括部長

主催者を代表して挨拶に立った森ビルの森賢明氏は、フォーラムへの参加申し込みが定員を大きく上回ったこと、参加者への事前アンケートでは現状のオフィスに対して半数が不満を持っていること、2014年6月にオープンした虎ノ門ヒルズのオフィスがすでにほぼ満室であることなどを紹介。今後も「理想的なオフィスの研究に取り組んでいきたい」と語った。

基調講演
「イノベーションの本質」

楠木 建氏
一橋大学大学院
国際企業戦略研究科教授

有機ELテレビと4Kテレビではどちらがイノベーションと言えるのか。一橋大学の楠木建教授は満員の参加者にそう問いかけ、イノベーションの意味をひもといた。楠木氏は「イノベーションと技術進歩は異なり、進歩という概念ではとらえきれない現象を表現するためにイノベーションという概念が生み出された」と指摘。冒頭の答えは「双方とも技術進歩ではあるが、イノベーションとは言えない」とコメント。イノベーションのポイントは、非連続性にあり、価値次元の転換を起こすことなのだと説いた。

その事例として楠木氏は、19世紀の米国で起きたケーススタディを紹介した。コンバイン収穫機の特許を取得した発明家は、収穫機を売るために分割払いを導入。これにより「資金がないから買えない」という設備投資のジレンマが解消され、「先に使い、後で払う」という形に米国の消費は一変した。これこそがイノベーションだと楠木氏は言うのである。

技術進歩はどんどん加速するが、やがてコモディティ化する。だが究極のイノベーションは新しいカテゴリーをつくり出す力がある。技術の進歩は〝できるかできないか〟が勝負の分かれ目だが、イノベーションは〝思いつくかどうか〟が分かれ目であり、だからこそイノベーションの起点は基本的に組織ではなく個人にあると強調。技術進歩が悪いわけでもないし、イノベーションがつねに良いわけでもないが、企業はどちらの路線を行くのか明確にしたほうがいいとし、もしイノベーション路線で行くのなら、「絶対やれ」とかKPI(重要業績評価指標)などを言うべきではない、そもそもインセンティブがなくても止むに止まれず出てくるのがイノベーションだと述べた。

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