Uberの事業は拡大し、自分の資産も膨らむばかり。しかし、そこで露出したのが同氏の傲慢さだった。「近頃は女が向こうから寄ってくる」。こう発言して、世間の総スカンを喰ったのは昨年のこと。
女性を蔑視する発言はこれだけではない。Uberにもっと女性ドライバーが加わって欲しいと、「うちは(ウーバーならぬ)、ブーバーです」とアピールしたのも失敗だった。ブーブ(乳房の俗語)をもじった冗談のつもりだったが、ネガティブな反響は予想以上に広がった。
そんなトップの行動は会社の隅々にまで伝染する。同社の重役のひとりは、Uberに批判的なある女性ジャーナリストに関して、彼女の日々の行動をUberで追跡するのは簡単だと発言。これがまた大きな批判を浴びた。
つまり、Uberのシステム上ではどのユーザーがいつ、どこへ向かっているのか、誰と行動しているのかといったことが一目瞭然にわかり、場合によってはそれを武器に批判する相手を懲らしめてやろうということである。
この発言に対しては、プライバシー侵害の観点からウーバーの姿勢を疑問視する人々が増え、Uberのアプリを削除する人々も続出して、一時は不買運動まで起こったくらいだ。
「良心」が問われている
どんなことをしても勝ってやる、というUberのアプローチも批判の対象になっている。ドライバー側に配分されるはずのチップをUberが横取りしているとか、競合会社のリフトの運営を妨害した、運賃を操作しているといった疑惑が絶え間なく浮き上がってくるのだ。
昨今のインターネット企業は「俗悪な行動はしない」という共通認識の上に立っているものだが、Uberはどうもそこから漏れ落ちていて、カラニックはちょっといけすかない奴、同社は批判も顧みない嫌な会社という評も一方で固まりつつあるのは事実だ。
それに加えて、先述した地元タクシー業界との衝突は、台湾など当局からの営業停止処分にもつながったケースもある。また、ドライバーにアプリ上での即答を求めるため、運転中のスマートフォン利用による安全上の懸念も無視できない。さらに、昨年サンフランシスコでUberの車が幼女を死亡させた際には、Uberが賠償責任を拒否して問題になった。賠償保障問題はその後改訂が進んでいるが、初めてづくしのこうしたサービスには、まだまだ法整備が追いつかない状態だ。
有望なIPO候補として真っ先に挙げられるUberだが、こうした批判や不審を反転させることができるのか。ディスラプターが企業として成功するためのいくつもの障害が、Uberには待っているのだ。
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