議会制民主主義の大原則を無視する暴挙に出た菅首相

議会制民主主義の大原則を無視する暴挙に出た菅首相

13日に民主党大会、14日に菅内閣の改造と党人事が行われたが、民主党政権の存在意義が問われている。

議会制民主主義の大原則を無視する選択を平然とやってのけたからだ。

党大会では2009年総選挙のマニフェストの全面見直し、党規約改定、綱領の策定を目指すことが決まった。

だが、規約や綱領はともかく、マニフェストの全面見直しは看過できない。確かに野党時代の策定で、政権獲得後に判明した事情や情勢変化に対応して柔軟に見直すべき点も多いが、全面見直しは納得できない。総選挙で有権者に問い、支持を得て政権を獲得したからだ。

見直すにしても、「5原則・5策」などの基本方針まで放棄するなら、改めて総選挙で有権者の判断を仰がなければならない。

一方、内閣改造では突如、与謝野入閣のサプライズが飛び出したが、同じ意味で言語道断だ。

民主党は総選挙で自民党政治からの転換を唱え、支持を得て政権を手にした。自民党政権で政調会長、経済財政相、官房長官、財務相などを務めてきた与謝野氏は、民主党が打破を目指した自民党政治を、政権の中枢で支え続け、推進してきた中心人物である。
菅首相は「消費税増税実現の助っ人」「経済運営の要」として目を付け、一本釣りしたのかもしれないが、「裏切られた」と受け止めた国民は多いのではないか。

マニフェストや人事だけではない。民意は09年の総選挙で民主党の主張と方針を支持し、10年の参院選で持ち出した政策や路線にノーという判定を下したのは明白である。菅首相は参院選敗北後も続投したが、2つの選挙で示された民意に従った政治と政権運営を行う義務がある。

政権を手にしてしまえば、首相と政権党は民意を無視して勝手になんでもできるというのであれば、選挙での国民の一票はただの政権委託の白紙委任状ということになる。民主主義に背を向ける民意無視が菅内閣の支持率低迷の最大の原因だろう。

政権維持に無我夢中の菅首相は、民主主義を延命の道具に使う権力主義者にすぎないのか。
(撮影:尾形文繁)


塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数

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