2015年、原発「再稼働」と「廃炉」はどうなる? 老朽原発”原則廃炉”は守られるか

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ケーブルに対する規制委の判断の試金石として、電力会社が注目しているのが、2014年5月に開始された、日本原子力発電・東海第二原発の新規制基準適合性審査だ。

東海第二原発は1978年に運転を始め、これまで規制委に審査を申請した原発の中では、最も古い。ケーブルは可燃性だが、現在、新たに延焼防止剤を塗布する方向で、その実証実験を行っている。今後、規制委が有効性をどう評価するかによって、老朽7基の対応も変わる可能性がある。

一括処理から10年程度の分割へ

また、同時に電力会社が関心を寄せるのが、廃炉会計の見直しだ。原発を廃炉にする場合、かつては資産の残存簿価は一括減損処理(特別損失)してきた。が、その会計規則を見直し、損失の一部を10年程度に分割し、減価償却費として計上できるようにするものである。経済産業省は2013年10月から省令改正で施行したが、2014年末には対象資産をほぼ全体まで増やす方針を決め、14年度中の施行を予定している。

一括特損処理になると、電力会社の経営への打撃が大きいが、減価償却なら電気料金の原価に算入され、利用者に転嫁される。2018~2020年に実施される、発送電分離(規制料金撤廃)後は、送電会社の託送料金へ上乗せすることで、すべての利用者に転嫁される方向だ。

経産省の試算では、老朽7基を廃炉にした場合、電力各社の損失額は1基あたり200億円程度とされる。これが決まれば、電力会社は負担が軽減され、廃炉を決断しやすくなるのは確か。とはいえ、会計原則を変えてまで廃炉円滑化を図ることには、妥当性に疑問の声も上がっている。

廃炉に関しては、運転40年超の老朽原発とは別に、活断層調査の対象となっている原発の動向も注目される。特に日本原電の敦賀原発2号機については、原子炉建屋直下の断層を活断層と認定する報告書案を規制委の有識者会合が2014年11月にまとめており、廃炉となる可能性が高まっている。日本原電側は「検証が不十分」として依然反発しているが、結論は覆りそうにない。

日本原電は電力会社の共同出資による卸電力会社で、原発3基を保有しているが、運転40年超の敦賀原発1号機、地元の反対が根強い東海第二原発でも、再稼働のメドが立っていない。他社の廃炉も請け負う廃炉専業会社化など、会社のあり方を抜本的に見直す必要性も指摘されている。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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