2015年、原発「再稼働」と「廃炉」はどうなる? 老朽原発”原則廃炉”は守られるか

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関電は老朽化した高浜1、2号機の運転延長を狙っている(写真は電事連会長と関電社長を兼ねる八木氏)

その一方で、原発再稼働とともに今後の焦点となるのが、老朽原発の廃炉だ。改正原子炉等規制法では、原発の運転期間は原則40年と定められたものの、規制委が認めれば、1回に限り最長20年延長できる。廃炉か運転延長か。その判断を真っ先に迫られているのが、2015年中に運転40年以上となる、高浜1、2号機、美浜1、2号機、玄海1号機、島根1号機、敦賀1号機の計7基である。

運転延長をするには、原子炉の圧力容器や格納容器などの欠陥の有無を電力会社自身が調べる特別点検を行ったうえで、運転開始から40年となる運転期間満了日の1年~1年3カ月前に規制委へ申請する必要がある。

制度導入時点で運転37年超だった7基については、特別に運転期間満了日が2016年7月7日に設定され、各電力会社は2015年4月8日~7月8日までに規制委へ申請しなければならない。規制委は運転期間満了日までに運転延長の認可を判断するが、その審査基準として新規制基準適合性審査に合格し、工事計画の認可を受けることを求めている。

関電の場合、2014年12月1日、高浜1、2号機の運転延長申請に向けた特別点検に着手した。記者会見で八木社長は「安全確保のため、必要な対策を実施できるメドがつき、経済性があると見通せた」と説明。高浜1、2号機は、発電出力が各82.6万キロワットで老朽原発としては規模が大きく、安全対策費用などを考えても、再稼働すれば競争力は十分と見た模様だ。

老朽原発の審査は難燃性ケーブルに焦点

しかし、老朽原発の審査について規制委の田中俊一委員長は、「新しい炉ではないので、簡単ではない」と述べている。「原則廃炉」を骨抜きにするような甘い審査をすれば、規制委自身が大きな批判を浴びることになる。老朽原発の新規制基準適合性審査で焦点となるのが、電気ケーブルの火災対策だ。

1980年以前に運転を始めた古い原発は、燃えやすい材質の電気ケーブルを使っている。だが、新規制基準は難燃性ケーブルの使用を義務化した。原発のケーブルは、一基当たり総延長数百キロメートル以上もあるといわれ、これをすべて交換することになると、膨大なコストと期間がかかり、再稼働しても採算が厳しくなる。

関電は高浜1、2号機について、「延焼防止剤を塗布しており、独自の実証実験でも、新規制基準の求める難燃性ケーブルの要件は満たしたと考えている」(広報室)という。しかし、規制委が審査でどう判断するかは予断を許さない。運転延長に「経済性がある」とした関電の判断も、「ケーブルの取り替えは想定していない」(同)。ケーブル交換を要求されれば、運転延長を断念せざるを得ないだろう。

他の5基は対応をまだ検討中。いずれも高浜1、2号機に比べ出力が小さく、競争力は劣る。そのため、各社が廃炉を決断する可能性は、比較的高い。中国電力は島根1号機を廃炉にしても、その約3倍の出力を持つ島根3号機がほぼ完成しており、廃炉への抵抗が少ないと見られる。九電にしても、川内1、2号機と玄海3、4号機の再稼働が近づいており、玄海1号機の廃炉は許容しやすいはずだ。

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