2015年は「日本型イノベーション元年」だ! まずはソニーとスタート、その全貌とは?

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入山:その気遣いをするっていう話が、興味深いです。最近、経営学の世界で注目されてる研究者にアダム・グラントという人がいます。彼はウォートン(ペンシルベニア大学ウォートン校)の教授で、最近『GIVE & TAKE(GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代)』という本を出しました。

彼はイノベーションとかクリエイティビティ(創造性)の専門家です。最近の彼の研究を読んで面白いのは、実は人間って「プロソーシャル」といって、人のために役立つとか、人の立場になって考えられる人のほうが中長期的にクリエイティブになるらしいんです。いくつかの実証研究をやって、全部同じ結果が出ているようなので、かなり真理に近い可能性がある。

だから伊佐山さんのやっていることは、実は必ずしも日本的ということでもないかもしれない。たぶん謙遜されておっしゃっているんだと思いますが、相手の立場に立って考えるっていうことは洋の東西を問わず、重要なわけです。いろいろな角度からものを見ることができるっていうのは、すごい強みになるし、長い目で見ると、大きな力になるんじゃないかと思います。

伊佐山:まだWiLをはじめて1年もたっていませんが、結局イノベーション起こすために必要なことは技術力や資金ではなくて、人のマインドセットだと思います。ある意味、マインドセット以前の配慮かもしれない、とも思います。「おもてなし」と言ってもいいかもしれない。心を通わせるプロセスを、大企業と外部で働く人とのコミュニケーションの中でどのくらい入れられるかによって、そのスピードも変えられるし、うまくいくものもうまくいかなくなる。

入山:配慮に付け足したいのは、もうひとつ、「自信」だと思うんですよ。自信を与えながら進んでいくことが重要です。お話を聞いていると、伊佐山さんはソニーのエンジニアに自信も植え付けていますよね。

ここまでソニーの話が中心になりましたが、ほかにもWiLは全日空さんとか、日産自動車さんなどからも出資を受けている。ほかの日本の大企業にも、ポテンシャルはあるのか。また、たくさんの大企業と日本型イノベーションを進める上で、WiLの組織はこれからどのように発展させていくのか、ということを聞いてみたいですね。

うまく行っているところに集中するようにしたい

伊佐山:複数の企業と組んでいく場合、どのようにすればいいか。私は、ここでは日本的なメンタリティは捨てなければいけないと考えています。たとえばベンチャーに10億円ずつ投資をしている場合、この会社は今伸びている、この会社は苦戦しているって違いが出てくる。この場合、日本的なメンタリティだと苦戦しているほうを助けにいっちゃったりするんです。

でもアメリカのベンチャーキャピタル業界的に言うと、うまくいかないほうは捨てて、伸びているやつに時間をダブルダウン(倍増)したほうが、うまくいっているほうのアップサイドによって苦戦している方のロスを軽く埋められるわけです。

入山:楽勝で相殺できますよね。

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