家族ではなく地域が見守る

聖マリアンナ医科大学名誉教授・長谷川和夫氏③

はせがわ・かずお 認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。1929年愛知県生まれ。53年東京慈恵会医科大学卒業、69年同大学助教授。73年聖マリアンナ医科大学教授、同学長、同理事長などを歴任。近著に『認知症ケアの心』。

最近は高齢者の尊厳が失われてきています。死亡通知を出さずに年金だけをもらう家族がいたり、100歳以上の方の居場所が不明になったりするなど、家族と高齢者、社会と高齢者の絆が薄れてきた。孤独死が当たり前の時代なので、家族の代わりに近所の人が高齢者の生活を見守ってくれる絆が作られれば、今のような問題は起こらない。

パートナーに先立たれた高齢者が、一人になっても自分で動けるときはいいけれど、認知症になったりして体が不自由になった場合に、誰かの助けが必要になるわけです。その際に、すぐ特別養護老人ホームとかを利用できないじゃないですか。待っている人が多いわけだから。

高齢化が一段と進めば、ますますホームヘルパーとか、訪問介護士とかを活用できなくなる。だから、介護の必要な高齢者を地域で支える仕組みがどうしても必要なんです。

自分もやがては高齢者になる

厚生労働省が「認知症サポーター」(認知症の基本知識に関する養成講座の受講者)制度をやっていますよね。現在、170万人超(2010年3月末)に達しているけれども、講座を受けたサポーターがいる、という段階で終わっているのが現状のようです。

一人暮らしの高齢者を地域で支えるといっても、一人では支え切れない。自分の仕事もあるし、家族もいますからね。だから炊事や洗濯、買い物、投薬など、4人くらいの担当者は必要。そして、就寝前に「大丈夫ですか」と声をかけてあげる人も必要ですね。高齢者を支える、地域ごとのボランティアチームができればいいと思います。

こういった取り組みを、市民が自発的にできれば申し分ない。

ある自治体では、お弁当を配達する人が配達先の高齢者に一声かける。高齢者が家で転んで動けなくなったとき、声をかけてくれる人がいれば救助が早まるかもしれない。でも、弁当屋さんすべてにそれをお願いすることはできない。弁当を売る時間がなくなってしまうからね。

だから、地域の市民が地域の高齢者を気に掛けて、彼らのことを考え、支え合う社会になればいいと思いますね。

もちろん、そういった住民の意識を上げるには課題も多い。ただ、高齢者の問題も認知症も、ひとごとではないんですよ。自分もやがては高齢者になるわけだから。たとえば高齢者への取り組みを無償でやった人には何か証明書を発行して、自分がそうなった場合にサービスを無償で受けられるようなインセンティブも一つ。地方自治体もさまざまな試みを模索し始めているようです。

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