日本の家電業界、需要は緩やかに回復するが、厳しい事業環境は変わらず《ムーディーズの業界分析》

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なお、日本の家電メーカーの一部は、デジタルAV市場における厳しい事業環境に対応すべく、高い成長性が見込まれるエネルギー関連事業へ経営リソースのシフトを進めている。しかしながら、エネルギー関連市場はまだ成長の初期段階にあり、その市場規模はいまだそれほど大きくない。このため、現時点において、この分野における売り上げおよび利益への貢献度は、各社の信用力に影響を与えるほど大きなものとはなっていない。

上述のとおり、家電業界の事業環境は依然厳しいものの、ムーディーズは、格付け対象となっている日本の家電メーカー5社(下表参照)については、コスト構造の改善が進んだこともあり、収益の回復自体は続くものと予想している。

世界的な金融危機に伴う需要の急減な低下に対応するため、各社とも過去1~2年の間に、収益性が低下したデジタルAV事業を中心に構造改革を実施した。また、その他の競争力のある事業(たとえば、パナソニックやシャープの白モノ家電、ソニーのデジタルカメラ、ビデオカメラ)から安定的な収益を確保している。このため、営業キャッシュフローは緩やかながらも改善していくであろう。

また、各社は今後数年間でそれほど大きな設備投資を予定しておらず、保守的な財務運営を行っているため、中期的にも財務内容の改善が進む、とムーディーズは予想している。ムーディーズは、厳しい事業環境の中で、家電各社が各事業分野で国際競争力を維持し、収益性と財務内容を改善していくことができるかに注目している。

写真撮影:梅谷秀司

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