年末年始の「シフト強要」に法的問題はない? 使用者はアルバイトの希望を無視できるのか

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「労働契約の内容がどうなっているかが、まず問題になると思います。労働契約や、アルバイトに対して拘束力のある『就業規則』の中に、会社がアルバイトに対して、特定の日に業務に就くことを命令できる根拠がある場合です。そのような場合、使用者が年末年始にシフトに入ることを求めることは、形式的には許されうると思います。

ただ、いくら形式的な根拠があるとしても、シフト制を採用している場合、アルバイトの予定や希望を聞きながら、弾力的にシフトを組むのが一般的です。

この張り紙のように、使用者側がアルバイトの希望や予定を無視して一方的にシフトを組み、それに異議を唱える人を欠勤扱いするといった事例は、問題があるでしょう」

“一方的”であることが最大の問題

ただ、年末年始は特に忙しいので、シフトを組むのは大変そうだ。

「多くの場合、年末年始に営業する会社は、人のやりくりが大変です。ただ、通常は、アルバイトの予定や希望を聞きつつ、シフトを調整しますよね。

そうした努力や調整をする前に、使用者側が一方的に『シフトに入らないことを原則として認めない』とアルバイトに押しつけるところが、最大の問題だと思います。

やはり、労働者と使用者の関係は、継続的な信頼関係を基礎にしたものですから、使用者が労働者の希望を聞いたり、シフトの調整といった基本的な手順を踏まずに、アルバイトにシフトを押しつけるのは妥当ではありません。

業務命令権の濫用として許されない可能性があると思います」

波多野弁護士はこのように話していた。

波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所

 

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