なぜ脆弱な北朝鮮が強気を貫けるのか?--ハーバード大学教授 ジョセフ・S・ナイ

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今北朝鮮で何が起きているのだろうか。2010年11月23日、北朝鮮軍が韓国領の大延坪島に砲撃を行った。民間人2名を含む4名が死亡し、多くの家屋と施設が破壊された。市民に被害が及んだことで、同年3月に起きた韓国哨戒鑑沈没よりも大きな摩擦を生み出している。大延坪島攻撃の数週間前、北朝鮮は訪問中のアメリカ人科学者たちに新ウラン濃縮プラントを見せていた。このプラントは北朝鮮の核兵器製造能力を高めるものだ。

過去20年にわたり、北朝鮮の核兵器計画は、世界の頭痛の種であり続けた。北朝鮮は1990年代初めにひそかにプルトニウムの再処理を行い、核不拡散条約に違反した。94年にはクリントン政権と合意した核開発抑制協定を破棄し、国際原子力機関の査察官を追放。さらに使用済み核燃料の再処理を再開し、核弾頭6発を製造できるだけのプルトニウムを確保している。

北朝鮮はミサイルの輸出、麻薬や偽札の製造などにも手を染めており、核物質を他国やテロリストに売却するのではないかとの懸念が高まっている。ウィキリークスが明らかにしたアメリカの機密文書によれば、北朝鮮はイランの高性能ミサイル計画を支援している。

ブッシュ政権は当初、体制転換によって北朝鮮問題を解決できると考えていた。それは、北朝鮮を孤立させ、制裁を加えることで独裁体制を覆すというもくろみだった。しかし、金体制が持ちこたえたため、ブッシュ政権は最終的に、中国、ロシア、日本、韓国、北朝鮮との6カ国協議に参加することに同意。05年9月の6カ国協議の結果、北朝鮮は体制保持の保証・制裁解除と引き換えに核開発計画の放棄に合意した。

だが、北朝鮮はすぐに合意を破る。当時アメリカは、金体制の紙幣偽造、マネーロンダリングにかかわる預金口座を封鎖していたが、それが解除されるまで、6カ国協議への復帰を拒否する方針を示した。

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