介護・宅配で切り開く、ワタミ100年企業への道筋《新「本業」で稼ぐ》

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 宅配弁当におけるワタミらしさは、メニュー開発とコスト管理の面で現れている。設備投資やブランド力が重要な介護事業に比べて、「宅配弁当は委託でも可能で、参入障壁は低い」(吉田)。そこで、6次産業モデルを構築する強みを生かし、食材の集中仕込みセンターをフル活用。1食当たりの品目が日替わりで15~20以上、平日5日分の料金も1人当たり2700~2850円と、業界屈指のコストパフォーマンスで差別化を図っている。

10年11月には兵庫県丹波市で弁当製造専用工場を建設し、関西進出を本格化、関東の営業拠点も拡大中だ。10年度の1日当たりの販売食数は前期比倍増の12・9万食を見込み、「今後は中国、東海地方にも販売拠点を設置し、13年度末には50万食を目指す」(吉田)と鼻息は荒い。

苦戦深刻な外食・農業 薄れるハングリー精神

好調な介護・宅配弁当事業に共通しているのは、ズバリ高齢者をターゲットにしている点だ。14年には65歳以上人口が総人口の25%、50年には70%という「超高齢社会」が予見されている日本で、両事業はいわば食いっぱぐれの少ない商売。09年6月にワタミ社長に就任した桑原豊は「外食では若者と中高年の財布、介護・宅配弁当では高齢者の財布がそれぞれある。ワタミは今、三つの財布を狙っている」と話す。

だが、外食の財布に関していえば、上手に引き出せているとはいえない。09年度は、上場以来初めて国内外食事業が減収減益となった。10年度も消費の冷え込みや低価格居酒屋の台頭にあらがえず、2期連続で営業減益に沈む。対抗策として、10年8月には7~8割が1品250円の新業態「仰天酒場 和っしょい」を投入したが、勝算は不透明だ。

農業に関しては、「黒字化必達」(桑原)と見込んだ10年度も赤字が続く。参入後の9年間のうち、単年度黒字はたったの1度という厳しい状況にある。「事業への思いが先行し、北から南まで圃場(ほじょう)を広げすぎたのが失敗だった」(ワタミファーム兼手づくりマーチャンダイジングの門司実社長)。本来、出荷した野菜をグループで活用するのが望ましいものの、その割合は外食では1割、介護3~4割、宅配弁当は1%未満と、連携はまだ十分ではない。

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