落ち目のキリン、社長交代で立ち直れるか 時価総額、売上高、営業利益で首位から転落

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2016年からの中期経営計画策定へ向け15年3月から磯崎功典・新社長に交代。三宅占二・現社長は代表権のない会長に。(撮影:尾形文繁)

「来年は見た目よりも絶対に達成できるという計画を立てて、新体制でしっかり達成し、マーケットの信頼を取り戻したい」キリンホールディングス(HD)の三宅占二社長は会見の場で、悔しそうにこう語った。

キリンHDは12月22日、中間持ち株会社・キリンと事業会社キリンビールで社長を務める磯崎功典氏を新社長に内定したと、発表した。3月末の株主総会を経て就任する。現社長の三宅氏は代表権のない会長に就任する。

このタイミングで社長交代を決めた理由について、「2015年は、最優先課題である国内飲料事業の反転、ブラジル事業の再成長に向けた重要な年。16年から始まる新しい中期経営計画を睨みながら、中長期の視点で再生プランを作成する必要がある。就任以来考えていたが、2015年度は、2016年からの中計を担う人たちにバトンタッチするべきだと考え、退任を決めた」と三宅社長は話す。

国内の競争力低下。アサヒ、サントリーに敗北

三宅社長がHDの社長に就任したのは、サントリーとの統合話が破談になった直後の2010年。以降、ブラジルのスキンカリオール社を約3000億円で買収するなど、積極的に海外展開に乗り出した。しかし、「この数年、国内事業の競争力低下や、海外は進出した国での経済環境の変化など、さまざまの課題が出てきた。現在のキリングループが置かれている環境はきわめて厳しい」(三宅社長)。

現在の苦境を招いた原因を「2009年にビール類でトップシェアを取り戻したこともあり、その後、数量よりも収益志向が強まってしまった。海外への投資の源泉として、国内事業を位置づけたということもあって、収益重視の姿勢がシェア低下を招いた。トップラインが伴ってこなければ、下期にマーケティング投資、広告費や販促費を抑えて最終利益を取るというのがこの2、3年の傾向だったかと思う」(三宅社長)と振り返る。

そうした結果、キリンHDは今年に入り時価総額でアサヒグループHDに抜かれ、初めて業界首位の座から陥落。2014年度の売上高でもサントリーHDに抜かれ2位に、営業利益ではアサヒ、サントリー両社に抜かれて一気に3位に転落する見込みとなっている。キリンの独り負けになっているのだ。

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