GG佐藤、4度のクビを味わった男の再出発 “波乱万丈以上"の野球人生からビジネスの世界へ

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「36歳でクビ4回。こんな経験なかなか出来ないでしょ。だから、今後の人生はそれを逆手に取って、キャッチフレーズにしちゃおうかな」。茶目っ気たっぷりに笑う。

1度目のクビは米国マイナーリーグで、2度目は西武ライオンズで、3度目はイタリアのプロ野球リーグで。そして現役最後となる4度目の宣告は、実にあっけないものだった。

今年10月4日。ファーム日本選手権に出場し、2軍での“日本一”に貢献した直後のことだった。

「ソックスぐらい脱がせてくれ」

「ユニフォームのまま宿舎に戻って来て、着替えようと右のソックスに手をかけた、まさにその瞬間でした。球団から電話がかかって『会議室に来てくれ』と。内容はもう分かってはいたけど、おいおい、ソックスくらい脱がしてくれよ、そんなタイミング(苦笑)。そして本部長から『来季は契約しないから』と言われてあっさり終了でした」

最初に日本球界に入れたのは、当時西武の監督になったばかりの伊東勤のおかげ。その伊東が現在監督を務め、なおかつGGの地元でもある千葉ロッテで最後にユニフォームを脱ぐ。覚悟はもう出来ていた。

「自分らしくていいんじゃないかな…。この2年間はレベルの上がらないロールプレイングゲームを続けている感じでした。努力して上手くなるわけじゃなく、努力して現状維持していたんです。伸びしろがないのは人間にとってキツイ。だからこそ次のステージに挑戦することに決めました」

師走の都内。寒空の下、ストライプの濃紺スーツをビシッと着込んだGGの姿があった。初めて持つ名刺には「営業マネージャー 佐藤隆彦」と記してある。地元市川市に本社のある測量や地盤改良工事がメインの、トラバースという会社で働き始めた。

「本当に毎日が勉強、ゼロからのスタートです」

社会人としてのスタートが出遅れていることは強く自覚している。お客に頭を下げ、先輩社員にお酌をする。自分がプロ野球選手だったからこそ、必要以上に丁寧な対応を心がけ、相手の心を掴もうとしている。

体重も計画的に10kg落とした。大きな身体はもう要らない。短髪に刈り込み、スーツの似合うスリムな体型にした。もちろん仕事相手に、少しでも好印象を持ってもらうために。ビジネスマンとして絶対に夢を実現してみせる。そんな強固な決意が随所に垣間見える。

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