【産業天気図・建設機械】新興国需要活況でコマツなど大手好調、だが中堅以下の回復遅れ「曇り」止まり

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

建設機械の景況感は、2010年10月から11年9月まで、終始「曇り」が続く見通し。世界需要は金融危機の打撃から着実に回復しているが円高が打撃。また、中堅以下の企業は相対的に国内依存度が高く、市場の復調を業績の回復に取り込め切れていない。

日本建設機械工業会の需要予測によると、業界出荷金額は10年度に1兆5088億円(前期比41%増)となる見通し。増加に転じるのは3年ぶり。需要の8割を占める輸出は、中国などアジアの新興国や資源開発国向けが大幅に増加しており、10年度通期の出荷額は1兆1311億円(同61%増)が見込まれる。

また11年度は業界出荷額が1兆6611億円(同10%増)、うち輸出が1兆2521億円(同11%増)となる見通し。過去最高だった07年度の2兆6757億円にはまだ遠く及ばないが、業界は着実に世界金融不況の打撃から回復しつつある。

この回復をもっとも享受しているのは、国内最大手のコマツだ。今11年3月期は売上高1兆7600億円(前期比22.9%増)、営業利益2000億円(同2.98倍)を計画している。強みの中国が絶好調なほか、インドネシアでも鉱山向けや林業向けの機械への引き合いが旺盛だという。産業機械も太陽電池向けワイヤソーが活況だ。業界大手、日立建機も今期は大幅な増収増益を見込んでいる。
 
 ただ、厳しい円高が痛手。たとえばコマツの場合、10年度通期の対ドル為替想定は85円と、前期比8円円高を見込む。1円円高で通期営業利益は35億円減る想定で、業績の下押し要素として無視できない。

また、業界中堅以下のメーカーにとっては、市場の回復が必ずしも業績の復調につながらない状況。たとえば建設用クレーンの国内最大手、タダノの今期は営業赤字に転落する見通し。そもそも、建物の建設工程で使われる建設用クレーンは建機需要の回復段階において、インフラ工事に使われる油圧ショベルなどより遅れる傾向がある。油圧ショベルを主力とするコマツなどとの回復程度の違いは、この商品特性にもよる。

来12年3月期は国内の建設需要もやや上向くと期待され、国内に軸足を置く中堅メーカーも一息つけるだろう。ただ、前述のように市場需要の伸びは今期ほどではないこと、一定程度の円高が続くと想定されることを踏まえれば、業界の景況感は「晴れ」に改善するのは至難だろう。
(杉本 りうこ=東洋経済オンライン) 

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