日銀のバランスシートを分析する 2度にわたる異次元緩和がはらむリスクとは?

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万が一、どこかのタイミングで、このひずみが逆回転するようなことがありますと、どうなるでしょうか。例えば、異次元緩和を終了した途端に金利が急上昇する可能性も考えられます。

本来なら、ある程度は市場の需給に任せなければ、市場としての機能が果たされません。市場をずっと歪めておきますと、必ずどこかでひずみが元に戻ろうとします。その時のショックの大きさは、誰にも分からないのです。

量的緩和が成功した米国とは、何が違うのか

一部のリフレ派の間では、「米国の量的緩和はうまくいったのだから、日本も同じような政策をとるべきだ」という意見があります。確かに、マネタリーベースを膨張させて通貨安をもたらし、景気を浮揚させることは、できなくはありません。実際、日本もその手法で景気が回復してきたところがあります。

しかし、米国と日本とでは、置かれている状況が異なるのです。1つは、財政状況です。米国の債務残高は、名目GDP比で110%程度しかありませんが、日本はゆうに200%を超えています。

もう1つは、米ドルが基軸通貨だということです。それゆえ、世界中の国、とくに弱小国などが米ドルを欲しがっていますから、ある程度通貨量を増やしても、十分吸収することができるのです。

このように両者を取り巻く状況が異なりますから、同じように大規模な金融緩和を行いますと、リスクの大きさがまるで違うのです。例えるならば、5段の跳び箱を跳ぼうという時に、30歳の人と80歳の人とで同じことをやっても大丈夫ですか、という話です。日本の金融政策は、成功する確率以上に、失敗した時の危険性や不確実性が大きいのです。

今回の追加緩和によって、異次元緩和の出口はさらに遠のいてしまいました。この先、日銀がどのような政策をとっていくのかにもよりますが、10年程度は出口が全く見えないまま進んでしまう可能性もあります。

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