熱帯感染症と戦う「GHITファンド」の大構想 日本の創薬技術をグローバルヘルスへ

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――エボラ出血熱の件でも、帰国者が感染していた場合の検査などでレベル4施設のないことが問題となりましたが、地元の理解を得られないため稼働はなかなか難しいようです。

バイオセキュリティの考え方がまだ国民全体に浸透していないのではないでしょうか。とくに、施設のある地域の人々に理解をしてもらう必要があります。ハードルは高いかもしれませんが、レベル4施設が稼働できないことのリスクを考えなければなりません。

施設を稼働させることで診断薬、ワクチンや治療薬を作ることができます。こういった薬を作っておくことによって、将来アウトブレイクが起こったときに感染リスクを減らすことができ、感染しても治療することが可能となるのです。施設を運用できないということは、この可能性を失うということになります。

さらに、日本は国際社会の中でも裕福な国です。豊かな国の人々は、他の国や地域に貢献する役割を果たさなければなりません。こういったことを含めて国民の理解を得るようにすべきだと思います。

5年で一つか二つの新薬を出す

――2018年までの5年間を活動のメドとしているとのことですね。

5年で活動を終了するということではなく、5年間の状況を見て運営の方向性ややり方などを一度見直す、ということです。この期間に一つか二つ、薬を出したいと考えています。

われわれは研究支援ですので、完成後のことはコントロールできません。ですが、条件が一つあります。特許権は開発者が保有しますが、蔓延国では利益を取ってはいけないということです。販売価格は製造、物流、副作用の情報管理などを含めたコストと同水準になるよう、無利益無損失となるように設定していただく。バイオベンチャーが絡む場合はロイヤルティフリーとなります。ただし、先進国向けの場合には条件はありませんので、先進国で利益を取っていただくことになります。

スポンサー、パートナーを増やすことも今後の重要なミッションです。医薬品メーカーだけでなく、業界の垣根を越えて募っていきたいと考えています。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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