インド新戦略車はトヨタを救えるか(下)

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次の舞台はブラジルへ 先進国向けにも転用

エティオスはインド専用車と銘打ってはいるが、その本質はトヨタの次世代戦略車だ。11年後半にはエティオス専用のバンガロール第2工場を2直化し、新興国への輸出を開始することが検討されている。12年末にはブラジルの新工場で、エティオスをベースにしたブラジル専用車の生産が始まる計画だ。

則武チーフエンジニアによれば、エティオス開発の究極の狙いとは、「いつでも、どこでも、誰でも安くつくれる構造の開発」だ。その原型はエティオスで確立された。あとはそれぞれの国に合わせて図面を修正していくことだ。これは先進国向けも、決して例外ではない。「エティオス開発で得たノウハウは『ヤリス(日本名ヴィッツ)』、カローラの次期モデル開発にも活用されている」(同)。

エティオス発売の1週間ほど前。バンガロールのNTTFIをブラジルトヨタの技術者たちが訪れた。同社が設計した部品についてすでに詳しく知っており、そのノウハウを吸収して帰国の途に就いたという。

どこか及び腰だったトヨタの新興国戦略は、ジワリと変化し始めている。かつて日本市場を基準とした高品質への支持によって、カローラは超ベストセラーになった。

いま、トヨタはその成功体験から脱出しようともがく。エティオスで始まった21世紀の小型車戦略を軌道に乗せることができるか。これはトヨタ全体の再生を占う試金石にほかならない。

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(撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2010年12月18日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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