富豪ロシア人学生のアイデアが世界を変える? 想像を現実にする、「専門家チーム」の方法

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グローバル化の時流の中で、何を学び、何を大切にするべきか? 26歳でイギリスのケンブリッジ大学物理学部に留学し、博士号を取得、世界的専門誌“Nature Materials”に論文を載せるなど物理学者としての実績を上げながら、現在はオックスフォードで近代日本社会の研究に取り組み、特に教育社会学を学ぶ。地元鹿児島では起業家として教育系NPO法人を設立中。多岐にわたる活動を行う30歳・岡本尚也氏が本連載で英国2大名門校、いわゆる「オックスブ リッジ」での実体験を基に英国流の「知」を語る!

 

ドイツで行われた学会で発表中の筆者

 オックスブリッジ(=オックスフォード+ケンブリッジ)では、異なる背景を持つ人材の交流を日常的に可能にするシステム(前回紹介したカレッジ制)に、議論好きの学生たちの気質も相まって、面白いアイデアが生まれやすい。中には、実際に形になるものもある。今回は、想像されたアイデアを形にする力の根源について話を進めたい。

富豪ロシア人のアイデアとは?

留学して1年ほど経ったある日、研究室の同期のロシア人がため息をつきながら部屋に戻ってきた。何があったか聞くと、こういうことだった。

「指導教官が、学会に出ろとうるさいんだ……」

国外での学会は、旅行にもなるし、勉強にもなる。せっかくだから、出ればいいのにと思ったのだが、私にとっては国外に行くいい機会でも、休みのたびにバカンスに出かける富豪ロシア人にとっては、まったくの別ものらしい。精神的な解放感が違うということだろう。彼はこう言った。

「これだけインターネットが普及してるのに、わざわざ飛行機に乗って移動して意見交換をしに行くのは、馬鹿らしいと思わないか?」

忙しかったので、そのときは適当に話を合わせたが、彼はどうも納得いかない様子だった。1週間ほどして彼は、今度はこんなことを言い出した。

「尚也、カレッジの友人に話をしたら、同じ悩みを抱える友人がけっこういた。協力者を募ってオンライン上で学会をやる! それなら問題ないだろう」

すごい執念だ。よほど行きたくないのだろう……。そして3週間後に起こったことが、またすごかった。

「コンピュータサイエンスとデザインを研究している友人たちと協力して、学術的なSNSを作った。これを使えば、いつ、どこにいようが学会のような交流ができる! ベータ版ができたから、使ってみてくれ!」

次ページ明らかに学会に行く以上の時間と労力を使っている…!
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