米FRBはインフレ・ターゲットを採用する可能性が高い--ディビッド・ウェッセル ウォール・ストリート・ジャーナル 経済担当エディター

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 もうひとつは海外との関係。海外で起きていることがQE2の効果を稀釈化することもある。世界経済に対する不安があるのでドル買いが進んで、ドルが思ったほど下がらない。あるいは、欧州の危機により、実体経済に影響が出たり、さまざまなコンフィデンス(信頼)が失われてしまって、どんなに連銀が頑張っても期待したように動かないということもある。

--追加緩和を示唆したバーナンキ議長の8月27日のジャクソンホールでの講演以後、長期金利は下がり続けたが、政策の発表後は反転し、上昇している。これは織り込み済みだったのかどうか。

たぶんバーナンキはがっかりしているだろう。発表した際は長期金利が下がって、非常にいいプランだと思っていたはずだが、しかし、実際に発表したら反転してしまった。

ひとつ考えられるのは、市場には今回の量的緩和6000億ドルの国債購入はあくまで“頭金”だという見方があったのではないか。しかし、外部あるいは連銀の中でも反対の声も強かったことから、これでおしまいになって規模が小さくなってしまうかもしれないと見て、市場にこうした反応が出たのかもしれない。
 
 二つ目の可能性として、経済的に明るい兆しが出てきたので、そうしたことを織り込んで長期金利が上がっているのかもしれない。アメリカの政治家は少し景気がよくなっても、財政赤字の問題の解決に向けて何もしないのではないかという見方から、長期金利が上がっているのかもしれない。

--日本では今回のQE2は実質的なマネタイゼーションではないかという見方もされている。

確かにアメリカでも連銀に対して批判的な人たちはそう言っている。しかし、バーナンキ議長は長期金利を引き下げることで、経済を健全にしたいわけで、経済が健康になってくれば、債券を売る。マネタイゼーションではないと言っている。
 
 しかしながら、今はっきりとしたことがわかるような状態ではないので、サッカーや野球のようにコーチによってやり方が違って、それを見ているファンが「そのやり方は違うだろう」とヤジを飛ばしているような状況にも見受けられる。

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