InstagramがTwitterを上回ったのはナゼ? リアルタイム情報にメディアも注目

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警察もデモをコントロールしようと努めており、交通封鎖をしながらデモのルートを誘導している。そのため、どこでデモが行われているかは、移動の可否に関わる重要な生活情報なのだ。また、いつデモ隊がコントロール不能になるかわからないこともあり、なるべく近づかないようにするべきだ。

モバイルからリアルタイムに情報が共有されるTwitterやInstagramで「#berkeleyprotest」というハッシュタグを検索している。

Twitterは、一昨日や昨日のデモ中に投稿された情報がリツイート(RT)されてタイムラインに上がってくることが多い。最新の投稿として表示されるが、元の投稿は最新ではなく、新しい情報かどうかの判別が付きにくい。また、人気のポストは大量にRTされるため、元の投稿が埋もれてしまう。

一方でInstagramの場合は、RTという仕組みがなく、またコメントも写真に対してぶら下がるため、より純粋に、そのハッシュタグの最新情報をつかむことができた。また必ず写真かビデオが付いているため、スマートフォンからより直感的に情報が得られる点もメリットと言える。

多様性や汎用性はインフラとしての重要な要素だが、モバイルに関しては、体験のコントロールが行き届いている方がシンプルさを保ち使いやすくなる。危機管理も含め、迅速に情報を得なければならない際に、Instagramが有効であることを身を以て体験した出来事だった。

メディアもInstagramを活用

バークレーでのデモにおけるInstagramの活用について、面白い事例を1つご紹介してこの話を終えようと思う。

デモ参加者もInstagramやTwitterで写真を投稿しながら練り歩いているが、500メートルから1キロメートルほどに行進が伸びていると、取材する際にすべてを把握することは難しい。そこで、デモ参加者のInstagramの写真やビデオを、メディアが素材として買い付けているのだ。

#berkeleyprotest タグで投稿されたビデオや写真を投稿した一般ユーザーに対して、AP通信やWall Street Journalのフォトグラファーがコメント欄でコンタクトを取り、クレジット入りでの写真の掲載を打診している様子が散見された。

しかも、投稿されてすぐのタイミングでコンタクトを取っている例もあり、デモ参加者の写真が全国、あるいは全世界に配信される速報に添えられるというわけだ。

また米国のローカルテレビ局も、Instagramの写真やビデオをユーザー名のクレジット入りでそのまま放送で紹介している様子も一般的になってきている。もちろんInstagramで共有される写真やビデオの解像度は、雑誌や新聞などのプロのクオリティとは違う。

それでも、スマートフォンのカメラの向上で、ベストではないが「可」と言えるレベルになってきた点も、報道での活用を後押ししているのではないだろうか。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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