タカタがエアバッグに使う火薬は安全なのか 拡散するリコール問題、火薬の専門家に聞く

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――危険性を軽視して使っていたのではないでしょうか。

こんな事故は予見できなかった。公的な規制にのっとり、部品メーカーと自動車メーカーで開発を進め、試験の結果、大丈夫だと判断したはずだ。開発時点から危ないと思っていたわけではないだろう。

――タカタ以外はほかの材料(硝酸グアニジン)を使っています。こちらのほうが安全なのでしょうか?

 硝酸アンモニウムも硝酸グアニジンも火薬の材料として古くからあるものだ。硝酸グアニジンは転移がないので、そういった問題を考える必要がない。

――転移という性質がある硝酸アンモニウムを使うべきでなかったのでは。

 それは厳しいところだ。火薬は潜在的には危ないものだが、工程管理がしっかり行き届いていれば使いこなせる。

加速劣化試験に限界?

――問題は工程管理である、と。

 まだわからない。工程管理だけの問題なのか、実環境での長期間の使用には耐えられない設計上の問題なのか。

――設計上の問題とは。

 実環境で10年~15年使ってみる試験ができれば一番いいのだが、現実的にそんなことは出来ないので、加速劣化試験というのをやる。これはガス発生剤に限らない。加速劣化試験では、高温環境に長時間置くなど過酷な条件下で製品寿命を検証する。

当然、そういった試験はパスしているはずだ。が、こんな事故が出てきたということは、十分だと考えた試験が十分ではなかった可能性がある。今後、調査リコールを進めることでわかってくるのではないでないか。

――今回のリコール問題にどう対処すべきでしょうか。

 まずはすべての可能性を洗い出す。1つの原因に特定できないかもしれない。複数でもいいので、これを抑えれば大丈夫です、というところまで追い込まないと信用してもらえない。

そのうえで、工程管理の問題であったならば、安全な領域が確保できるように工程を見直す。チェック方法も変えないといけない。徹底的に管理できる体制を作る必要がある。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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