アップル、横浜に研究開発拠点を置く必然 ヘルスケア分野での事業を推進か

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アップル関連のニュースを発信し、海外のメディアからの引用も多数なされている「MACお宝鑑定団」によると、この特区は、医療と健康の特区となっており、特区の性格から、ヘルスケア分野を中心とした研究開発が行われるのではないか、と予測している。

特に日本では、ヘルスケア分野で法制度が厳しい現状がある。例えば米国では、iPhoneやApple Watchで記録したデータを活用した医学的なアドバイスができるように準備を進めているが、日本で同じ事をやろうとすると、2つのハードルが存在する、とMACお宝鑑定団は指摘する。

特区活用で医療機器としての販売を推進?

ヘルスケアデバイスの開発と販売には認可が必要となる。医療機器として認められなければ、医療行為で利用する事ができないのだ。

例えばApple Watchには心拍計が内蔵されており、1日を通じて時計を装着しているだけで心拍数を計測することが出来るが、医療機器ではないため、医療診断のデータとして利用する事はできない。現在販売されているウェアラブルデバイスにも共通しており、活用の範囲は個人的な利用に留まることとなる。あるいはアプリを通じたデータの解析や診察も、医療行為に当たるため難しい。

また、もしもデバイスが医療機器として認可された場合、MACお宝鑑定団は「販売面でのハードルがある」と指摘する。販売には医療専門家の設置が必要となるため、例えばApple Storeの店頭での販売は、現状のままでは難しい。
こうした障害を乗り越えるために、特区への参加を活用しようとしている、と見ることができる。

アップルは世界での研究開発への投資を加速し、非常にシンプルな形状に落ち着きつつあるiPhone・iPadをいかに生活やビジネスに深く根付かせるか、という取り組みを強めている。

デザインやものづくり、コンピュータのプロセッサ、ソフトウェアなど、多岐に渡るが、日本というフィールドではヘルスケア分野が選ばれた模様だ。同時に、特区を活用してその国でのビジネス展開の障害をクリアするという手法もまた、アップルの世界戦略の「方法論」として活用が進んでいくことになるだろう。
 

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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