【産業天気図・住宅・マンション】マンション市況底入れも、中小デベロッパーには厳しい環境続く

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

 住宅・マンション業界の景況感は、2011年9月まで1年終始「曇り」止まりだろう。マンション市況は底入れが確実だが、中小デベロッパーは銀行融資の抑制状態が続き、経営面では厳しい環境にある。

不動産経済研究所によると、首都圏の供給戸数は06年の8万戸割れから地滑り状に減退が続き、09年にはついに4万戸を割っている。4万戸割れは92年以来、実に17年ぶりだ。供給戸数が急減した背景は、用地価格や建築費の高騰が影響し、分譲価格がハネ上がった結果だ。加えて、08年9月にはリーマンショックに端を発する世界的な信用収縮が発生。マンション需要が一気に冷え込んだだけでなく、中小のマンションデベロッパーは資金繰りの悪化から相次いで倒産した。残った大手デベロッパーも手持ちの販売用不動産の評価減や完成在庫の圧縮を強いられ業績が急悪化した。

しかし、その後は財政出動や金融緩和を受け、国内景気も回復過程に入った。効果があった業界関連の政策は、(1)住宅ローン課税の引き下げ、(2)贈与税の非課税枠の拡大、(3)銀行の住宅ローンや住宅金融支援機構のフラット35などの金利引き下げ--といったもの。これらが購入希望者の背中を押した。加えて、供給減少が2~3年ほど続いて、需要の底だまりが拡大していたこともあり、10年に発売されたマンションは軒並み即日完売という5~6年前のブーム状態を思い出させるような結果となった。

ただ供給地域をよく見ると、ほとんどが東京都心や周辺の交通利便性の高い場所に限定されている。それまで郊外でのマンション供給を得意としてきた中小デベロッパーが、相次いで倒産し市場から退出、また購入者の立地選好が強まった結果だ。そうした都心好立地の供給となると、ひと頃に比べ販売価格は低下したとはいえ、現在でも5000万円を越える。ローン審査が通りやすいとされる「年収の5倍以内」という考え方にあてはめても、1000万円以上の年収がある層でやっと届く価格帯だ。

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