「バズフィード」が快進撃を遂げた本当の理由 「受け狙い」だと思ったら大間違い

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同サイトのビジターの70%がソーシャル・ネットワークからやってくるというのは、そうしたテクノロジーの効果の一面が感じられるものだ。ちなみに、バズフィードでは20人のスタッフが、ピンタレストやタンブラー、インスタグラムなどの他のサイトへの投稿を専門に行っているという。

創業のきっかけは、ナイキへのメール

さて、共同創業者のジョナー・ペレッティーは、バズフィード以前にも別のメディアを成功させている。それはハフィントン・ポストである。3人の創業者のひとりとして立ち上げに関わり、同サイトがAOLに売却された後に独立した。

だが、それ以前のペレッティーの履歴はメディアとはほぼ無関係であったと言っていい。最初の仕事は、ニューオリンズの高校のコンピュータの先生。ところが、生徒たちとやったプログラミングのプロジェクトをいろいろなところで発表しているうちに、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボへ行って研究をすることになる。内容は、コンピュータと教育だ。

ペレッティーがコミュニケーションやメディアに関心を持ったのは、メディアラボ在籍時代に注文しようとしたナイキのスニーカーがきっかけだ。

ナイキがカスタム・メイドを売りに、ユーザーが自分の名前をスニーカーに入れられるサービスを開始。ペレッティーは、名前の代わりに「スウェットショップ」と入れるよう注文したのだ。ナイキの製造を支えている途上国の労働者の環境を、ここに刻もうとした。

ところが、ナイキから届いたのは「製造不可」のメール。そこから、ペレッティーがナイキ担当者とやりとりしたメールが口コミで広がったことで、ペレッティーは「口コミ」メディアに関心を抱くようになったのである。

「人々がメディアをどう消費しているのか。それに合わせたメディア会社を目指している」とペレッティーは語っている。メディアはどこへ行くのかという大きな問いへの、ひとつの試みがバズフィードなのである。
 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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