実は大健闘「FNS歌謡祭」は誰が見た? アルフィーとNMB48をコラボさせる理由

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賛成派は、「最近の音楽番組は口パクだらけだから、コラボレーションのところで予定調和が崩れて楽しい」という意見です。この人、持ち歌以外はこんなに下手だったのか、とか、ベテランの技量はさすがだなとか、そういう発見ができるから、画面にくぎ付けになると。

一方、反対派は、「無理にコラボレーションする必要があるのか」という意見です。コラボレーションは、場合によっては、アーティスト側も練習不足が否めず、キーも合っていなかったりするので、何とも落ち着かない結果となります。その下手さばかりが気になって、歌に集中できないと。それに、歌番組を年末ぐらいしか見なくなってしまった視聴者には、「せっかくだからピンで聞きたい」という気持ちもあります。

確かに筆者も「2014 FNS歌謡祭」を見ながら、今年のヒット曲である秦基博の「ひまわりの約束」、玉置浩二の名曲「メロディー」、イルカの「なごり雪」などは、わざわざコラボレーションにする必要があったのかなと思いました。

紅白はどうなる?

賛否両論ありながらも、「2014 FNS歌謡祭」が、コラボレーションを多用するというのは、音楽的な結果はさておき、こちらのほうが視聴率を取れると思っての戦略なのでしょう。

さて、NHKの「紅白歌合戦」が近づいてきましたが、紅白でも「コラボレーション」がたくさん見られるはずです。さすがに紅白は一緒に歌わせることはしませんが、今年も、演歌歌手の後ろで、漏れなくAKB48が踊り、ジャニーズ系のアーティストが手拍子をすると思います。

紅白でも、「2014 FNS歌謡祭」と同じような戦略が、要所要所に見られるはずです。曲順はこれから発表されますが、例年どおり、演歌とアイドルは固まらないように、うまく構成してあることでしょう。そして当日、異なる世代のアーティストが同じ曲に登場したら、「あっ、これはそれぞれのロイヤルカスタマーを狙った、視聴率アップ作戦だな」と、ひそかに戦略的思考を発揮してみてください。

佐藤 智恵 作家・コンサルタント 

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さとう ちえ / Chie Sato

1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。公式ウェブサイト

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