日本の電力業界、海外展開では資本利益率とリスクコントロールに注目《ムーディーズの業界分析》


コーポレートファイナンスグループ
VP-シニアアナリスト 岡本賢治

電力会社の格付け

ムーディーズは、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、北陸電力、九州電力、北海道電力、沖縄電力および電源開発(Jパワー)の9社に格付けを付与しており、格付けはすべてAa2である。国内電力市場は上記の各地域電力会社8社に東北電力、四国電力を加えた主要10社が国内電力販売量の86%を占めており、残りをJパワー、日本原子力発電、PPS(特定規模電気事業者)などが分け合っている。各地域における独占的な事業基盤および安定的な収益構造を背景に、ムーディーズは日本の電力業界の見通しは安定的とみている。

日本の電力会社は、電気事業法に基づく強固な規制の枠組みが確立されており、規制環境は安定的で信頼性が高い。総括原価方式(料金を商品やサービスを提供するのに必要な原価を賄うだけの収入を得る水準に設定すること)や燃料費調整制度などの安定した規制と強固な枠組みが、電力会社のコストや投資の回収可能性を支えており、日本の電力会社は世界の電力会社に比べて高い格付けとなっている。

需要動向

電力需要の伸びは、過去10年間で毎年0.5%と、GDP成長率とほぼ同率の拡大を続けてきた。しかし、リーマンショックに端を発する世界的な金融不安と消費の減退を受けて、2009年3月期と10年3月期に、初めて2期連続で前年比で減少した。しかし、11年3月期は、会社予想合計ベースで、需要成長率は5.1%増を見込んでいる。今後数年は世帯数の伸びが期待できるとみられ、家庭のオール電化機器導入に伴って新規需要の開拓も期待できる。しかし、人口の伸びが明らかに減速していることや工場の海外移転などで、今後の電力需要の伸びはGDP並みの低成長に抑制されよう。

電力会社のコスト構造~収益構造は基本的に安定

電力会社は総括原価方式、燃料費調整制度を背景に、収益は07年3月期まで安定的に推移した。しかし、08年以降、原油価格の想定以上の急騰と反落、リーマンショックによる2年連続の需要減少で、直近3年は安定的な収益構造が崩れた。燃料費の上昇に対し、人件費の削減や設備投資抑制などのコストカットで対応したが、カバーしきれなかった。しかし、今後も原油市況などの短期的な変動に収益がある程度左右される状況はありうるだろうが、電力各社の収益構造は強固な規制の枠組みを背景に基本的に安定しており、今後利益率は安定的に推移する状態に戻るとみている。

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