【産業天気図・ソフト・サービス】受注胎動、データセンターは引き合い多数、だが本格回復にはなお時間要す

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

 ソフト・サービス業界の景況感は、2011年9月まで終始「曇り」にとどまる見通しだ。クラウド・コンピューティングを背景にデータセンター需要が活況など好材料がある一方、システムの保守・運用は顧客企業の内製化の動きが打撃。富士通などトップ級企業の業績回復も緩慢だ。

過去1年、本格的な回復期が遅れてきたSI(システム・インテグレーション)業界。現状では金融機関や自治体系の大型プロジェクトを受けられる大手業者を中心に10月頃から、案件受注が動き始めたという。足元はまだコンサルティング段階だが、11年春頃からは、システム設計に着手するなど、本格的に動き出す期待が高まる。

ただ企業業績の回復度は、得意分野によってまちまちだ。製造業全体ではIT投資意欲が低調な中、JFEシステムズは食品メーカーのトレーサビリティで伸びる気配など、小型ながら特色を出す企業も出始めた。一方で、行政や金融といった超大型のシステム案件を得意とする、富士通、NEC、NTTデータなどのトップ級の回復が遅い。09年度から進行基準が適用されているため、検収時に収益が集中することはなくなったものの、初期のコンサル時点ではほとんど利益が上がらず、費用が先行するためだ。

また、ITシステムの保守・運用事業も企業の内製化の動きに伴って、低迷が続いている。システムエンジニアなどの人材派遣を主業務とする中小型企業も苦戦が続きそうだ。

潜在需要はある。マイクロソフトのOS・ウィンドウズ7への乗り換え需要を機に、社内システムの再構築やクラウド化の検討を始める企業が増えるのはほぼ確実だ。ただ、現下の景気環境では、本格的な乗り換えは11年後半にずれ込みそうだ。

例外的に、データセンター事業者にとっては明るい状況。これまで「データを預かる倉庫」と見なされてきたデータセンターが、クラウド化の流れの中で注目を集めている。グリーやミクシィといったウェブ事業者の需要も引き続き好調なうえ、スマートフォンの普及が本格的になれば、データの流通量が増え、データセンターの役割も大きくなる。当面サーバー数もまだ不足気味で、データセンター事業者にとっては書き入れ時だろう。
(小長 洋子=東洋経済オンライン)

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