ミャンマーにあふれる「タナカさん」とは? 紫外線から肌を守る、ヤンゴン女子の必需品

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ナチュラルな木のもののほかに、クリームに加工されたタナカも売られている

著者も、実際にタナカを塗ってみた。塗ってしばらくするとパリパリに乾いてきて、触るとベビーパウダーのようなさらさらとした感触だ。ただ、それと同時に肌がつっぱるので、若くない肌、乾燥肌には注意が必要だ。

ヤンゴンでは、ファンデーションもリップもマスカラもしていない「スッピン女子」が一般的で、彼女たちには“唯一のメーク品”としてタナカが人気だ。ただ、20代のイマドキおしゃれさんたちには、「タナカなんて、UVカット機能もないし、田舎者がするものよ」という風潮も現れ始めている。

しかし、オーガニック・ナチュラルコスメブームというちょっと上から目線でみれば、このタナカ、海外に向けてこれから流行るのではないか、とも思えてくる。タナカにもケミカルなクリームタイプとナチュラルな木のタイプがあるが、現地では断然、木の方が人気であった。

近隣諸国の女子はタナカをどう思う?

アジアといえども、都会でこんな光景はなかなか見たことがない。ということで、このタナカについて、近隣諸国の同世代亜女子(アジア在住の女子)はどんなふうに感じるのか、タナカを頬に塗った女性の写真を見せて感想を聞いてみた。

「冷たくて気持ちよく、オートバイに乗るときに最高」と話すホーチミン在住のマルさん。

「タナカはとてもかわいいと思うけれど、韓国では、自然のものよりブランドの化粧品を好みます」(ソウル)

「インドネシアにも天然由来の化粧品は人気だけれど、ミャンマーよりももっとモダンな容器に入っています」(ジャカルタ)

「白い顔をして歩きまわるのは、かなり変な気がします。顔全体をカバーしないと意味がないのではないかしら」(クアラルンプール)

「夫がミャンマー土産に買ってきてくれました。見て爆笑したけど、効果をきいてすぐに使ってみたくなりました。冷たく気持ちよくて、オートバイに乗るときに最高。大好きです」(ホーチミン)

なるほど、アジアの国々でも、かわいいとか、おかしいとか、賛否両論だが、ジャカルタのように対抗心があったり、ちょっとタナカは気になる存在のようである。

ついでに美白意識について聞いてみると、各国の多くの女子は「明るく透明感のある白い肌」を追い求めているようだった。中国、韓国、マレーシアの亜女子達から白肌が人気の理由に、「白い肌は七難隠すから」ということわざが偶然にもあがったのは、なんとも興味深かった。

急速に発展するヤンゴン。強い日差しの降り注ぐこの国で、果たして10年後、タナカさんをどれだけ見ることができるだろうか。

山本 貴代 女の欲望ラボ代表 女性生活アナリスト

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やまもと たかよ / Takayo Yamamoto

女の欲望ラボ代表、女性生活アナリスト。静岡県出身。聖心女子大学卒業後、1988年博報堂入社。コピーライターを経て、博報堂生活総合研究所上席研究員。2009年より「女の欲望ラボ」代表。主に10代から70代までの女性をネットワークし(一部男性もあり)、eメールにより本音を収集。専門は、女性の意識行動研究。2014年春より、博報堂と恊働で亜女子(アジア女子)研究のプロジェクト「博報堂亜女子会議」を立ち上げ、現在7カ国のアジア女性と日々メール文通をしている。著書に『女子と出産』(日本経済新聞出版社)、『晩嬢という 生き方』(プレジデント社)、『ノンパラ』(マガジンハウス)、『探犬しわパグ』(NHK出版)。共著に『黒リッチってなんですか?』(集英社)『団塊 サードウェーブ』(弘文堂)など多数。

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