なぜ中国からはノーベル賞が出ないのか ビジネス面から見える、技術軽視国家の弱点

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そもそも、研究や開発や探検とは、だれもやらないことに価値がある。イノベーションの本質は「知識創造プロセス」だから、その環境の整ったところでしか達成できないのである。

中国の成熟度と、個々の中国人の能力は別

さて、いくら科学系のノーベル賞がゼロだと言っても、中国の問題点ばかりをあげつらうのはアンフェアである。現代の中国の研究制度や評価制度に歪みがあることと、中国人の個々の研究者の能力とは全く別物だからだ。

そもそも、世界の三大発明の原点はすべて中国である。三大発明とは印刷技術、火薬、羅針盤だが、まず「印刷技術」は2世紀ごろに蔡倫が紙を発明し7世紀には中国で木版印刷がはじまった。ヨーロッパのグーテンベルグによる活版印刷が始まったのは1450年頃だ。

「火薬」にしても7世紀から10世紀にかけて「唐」の時代に黒色火薬が使われていた。「羅針盤」も11世紀には中国で実用化されていたようだ。中国人こそ創造性があるといっても過言ではない。「APECブルー」ではないが、再び青い空を取り戻すために、エネルギーや公害問題に取り組んでいる技術者の中から、素晴らしい技術が発見されるかもしれない。

中国国籍の中国人がノーベル賞をとるには、まだ歳月が必要だという中国人の識者が少なくないが、別に今の中国人にノーベル賞がなくても気にすることはない。そのうちには毎年、中国人がノーベル賞を受賞する時代が来ることは間違いない。
 

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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