「自民党300議席突破」は本当なのか 「情勢調査」から見えてくる、衝撃の選挙実態

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さて、この調査結果を踏まえて、各党は選挙戦術の立て直しを図る。

野党民主党は、当選の可能性が高い選挙区を重点地区と位置づけ、1人でも多くの当選者を増やすため、党をあげてバックアップ体制を図る。

だが、それもかえって応援に回る幹部自身の選挙区が危うくなり、応援に力が入らない。

余裕の自民が、民主党の重点地区でとる戦術とは?

しかも、野党の重点地区は、自民党にとっても重点地区だ。調査の結果を見る限り、自民党はほとんどの選挙区が当選圏内の選挙区が多いため、数少ない重点地区に、集中的に「顔」である小泉進次郎、丸川珠代、片山さつきを応援にやり、さらには幹部や官僚を送り込み、連日とっかえひっかえ投入。さらには安倍首相が入り、ダメを押す。自民党の伝統的な戦術だ。

正直、苦戦候補がこの段階でやれることは限られる。今さらじたばたしても始まらないと、これまでのスタンスを変えない候補もいる。どうにか「比例で救って」と、すでに同情票に頼る候補もいる。横一線だが、与党のライバル候補に連日大臣の応援が来ると泣きを入れ、さらなる支援をネットで訴える者もいる。

情勢調査は、見えないものを見せてくれ、それによって戦略の立て直しができるから候補者にとってはありがたい。だが、相手にとっても同じ条件だ。それを踏まえ、的確な戦術を打って出るだけの持ち駒などのゆとりがあるかどうかが、勝敗の分かれ目となる。

当選すれば、国が国民の税金から毎月の給料(歳費という)を保障し、3名の秘書も国家予算で賄ってくれる。だが、落選すれば、失業者である。次の選挙でリベンジしようにも、明日から路頭に迷い、生活費や活動費の金策に走らなくてならない。

候補者たちは、「人生を賭けた大博打」に、残りの数日をかける。やりようによってはまだひっくり返せる選挙区もあろう。

「火事は最初の5分、選挙は最後の5分」

有馬 晴海 政治評論家

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ありま はるみ

1958年 長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒業。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立し、テレビ、新聞、雑誌等での政治評論を中心に講演活動を行う。政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評がある。ポスト小泉レースで用いられた造語「麻垣康三」の発案者。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方で、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰し、国民にわかりやすい政治を実践している。主な著書に「有馬理論」(双葉社)、「日本一早い平成史(1989~2009)」(共著・ゴマブックス)「永田町のNewパワーランキング100」(薫風社)、「政治家の禊(みそぎ)」(近代文芸社)など。

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