過小評価は禁物、「長野県北部地震」の衝撃度 名古屋大学の鈴木康弘教授に聞く

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2014年11月22日夜に発生した、長野県北部地震の被害状況(写真提供:鈴木康弘教授)

震度観測点があり、6弱を観測した小谷村などと比べても明らかに被害がひどい。堀ノ内地区には観測点がなかったが、木造家屋の倒壊率が3割以上という震度7のレベルではあったはず。それは気象庁や研究者がもっと強調するべきだ。そうでないと、今回の地震のメカニズムと被害との関係がぼやけてしまう。

一方で、地震の規模が小さかったことも事実だ。糸静線で想定されている地震の規模は北部、中部、南部でそれぞれM(マグニチュード)7.5ぐらい、連動すればM8クラスに達する。しかし今回はM6.7と、一回り小さい。それをどう捉えるかが問題だ。

――大きな地震につながっていくのか。

糸静線全体が動く前触れかどうかはまったく分からない。

北部ではM7.5以上の地震が起きるとしてきた予測も、見直しが求められる。千年に一度という大きな地震が別に起こりうるのか、それとも今回くらいの地震が数百年に一度起こると考えるべきなのか。また、もしそれが糸静線全体に言えることであれば、全体の地震予測モデルや防災体制の見直しが迫られる。

小規模な現象ほどわかりにくく、やっかいだ

これまで大きな地震がまれに起きるという予測を立ててきたが、それで本当によかったのか。今回クラスの地震が起きるとは考えていなかったが、これくらいの地震なら、かなり頻繁に起きるという考えは成り立つ。その場合、地震発生確率は大きく跳ね上がる。

活断層の位置は公表されてきたが、それが実際に動いたとき、震度7の揺れがどこで起きるかという情報は整備されてこなかった。言おうとすれば言えたはずなのに、防災上、最も重要な情報が出されていないという反省がある。

東日本大震災は「百年に一度、M8の地震が起こる」と思われていたところで「千年に一度のM9の地震」が起きて大問題になった。今回はその逆で「千年に一度、M7.5が起きる」と思っていたところに「数百年に一度のM6.7」が起きた。小さくてよかった、では済まない。今回、死者が出なかったのは奇跡的で、これくらいの地震が高い頻度で起きるなら、決して無視はできない。小規模な現象ほど分かりにくく、やっかいだということもある。

「小規模な現象ほどわかりにくく、やっかいだ」と語る名古屋大学の鈴木康弘教授

――日本全体で地震や火山活動が活発になっているのではないかとの懸念がある。

やはり東日本大震災後、状況が変わっているとの覚悟は必要だ。今回の地震や御嶽山の噴火を考えると、東日本から中部に活動が移り、西日本に広がりつつあることを示しているかもしれない。

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