「ネット広告のアドテクは、もう死んでいる」 行き詰まる、ネット広告の自動取引

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――なぜ?

リターゲティングは、あくまで過去の行動履歴のみをベースにするので、実はごく一部の情報を活用しているにすぎません。マーケティングの観点でいえば、ネットで何らかの情報を探しているというのは購買行動の最終局面にある訳です。確かに一定の効果が見込めますが、広告在庫に対して1割ぐらいしかカバーできません。

人間はネットの中だけで生きていない

――リターゲティング以外のアドテク手法はないのでしょうか。

リターゲティングだけに頼っていては、いずれ行き詰まるのは最初からわかっていました。そのため、マイクロアドは行動履歴からそのユーザーを追い掛けるのではなくて、ネットの中で似たような属性の人を探して、その人に最適と思われる広告を表示する「オーディエンスターゲティング」に取り組んできました。

ところが、まだ満足するところまで育っていません。というのも、人間はネットの中だけでは生きていないということです。ネットの履歴だけでは、1人の人間が普段はどういう行動をしているのかが、実際のところはわからない。たとえば、ネットで車のサイトや旅行のサイトを見ていたからといって、ユーザーが車を買いたいとか旅行に行きたいという明確な目的があっての行動なのかどうかがわからない。ただ単に見ているだけかもしれませんから。

同じ自動車に興味を持っている人であっても、軽自動車と超高級車ではまるで客層が違う。それをリターゲティングだけで追いかけていって、それで広告の効果を高められる、と説明しても、それは無理があります。

――CCCグループとの提携でそこを打破できる?

オーディエンスターゲティングに取り組んできたことで、購買パターンが似ている人を探してくる技術は磨いてきました。しかし、その元になっている情報が正確でなければパフォーマンスは出ません。

データの精度をあげるために取り組み始めたのが、CCCのデータ活用です。5111万人の利用会員データベースがあるCCCグループの強みは、実店舗における膨大な購買データを持っていることです。これをうまく活用すれば、より効果的な広告配信をできるはずです。購買から推計した志向性データやライフスタイルデータなどを活用すると、ネット上の行動データだけではできなかったカテゴリをつくって、広告配信ができるようになると考えています。これは、あまり前例のない取り組みですが、行き詰まったアドテクを前進させるキッカケになるのではないかと思っています。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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