ハーバード留学後、「日給1800円」の進路とは 青年海外協力隊から留学、そして再び現場へ

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大久保:いえ、実はそうでもなかったんです。大学3年生の頃、就職活動を控える時期ですが、本当に自分のやりたいことがわかりませんでした。そこで夏休みに、外資系のコンサルティング会社でインターンをしました。面白い、でも、何かピンと来ない。そこで、まったく違う選択肢として、今度はバングラデシュの教育系のNGOで1カ月ほど働いてみることにしました。

子供たちに英語を教えたり、算数を教えたり

石崎:なるほど。バングラデシュでは具体的にどういった活動をされていたのでしょうか?

大久保:基本的には、子供たちに英語を教えたり、英語で算数を教えたり、そんなことをしていました。貧しい子供たちばかりで、朝学校へ行く前に捨てられた空き缶を拾って業者へ売り、少しばかりの小金を稼ぎ、それを家族に渡しているような子たちです。彼らと過ごした時間が、後の進路形成に大きく影響しています。

石崎:つまり、そこでの活動から、本気で開発、教育の道を目指そうと思ったということでしょうか?

大久保:はい、そうです。もともと子供は好きでした。彼らに授業をするのも、すごく楽しかったです。ダッカの学校で、ひとりだけまったく授業を聞かない子がいました。いくら工夫しても、興味を持ってくれない。なんとか粘ろうとしてみたのですが、とうとう最後の授業日が来てしまいました。授業の終わり、お別れのあいさつをしようとしたら、その子は教室を出て行ってしまい、「ああ、最後まで彼は授業を聞かなかったな」と思いました。

でも、学校を出ようと門へ向かうと、彼が待っていたんです。そして僕の足にしがみついて、「帰らないで」と泣き叫び始めました。ベンガル語で何を言っているかわからなかったのですが、通訳の方が言うに、こんなにも自分の面倒を見てくれた人、思ってくれた人はいなかった。その僕がいなくなったら、この先どうなるのか、そう言っていたようなのです。

石崎:なるほど……。それは強烈なシーンですね。

大久保:はい。その時でした。まさに鳥肌が立ったんです。僕はこういった子供たちの役に立ちながら人生を送っていきたい、そう思ったのです。

石崎:大久保さんのバングラデシュでの経験は、ある意味で人生の原体験のようなものになったのですね。そこから、卒業後は青年海外協力隊の一員として、モザンビークへ行かれました。このあたりには、どういった背景があったのでしょうか。

東大にまで入ったのだから、学歴は生かさないと…?

モザンビーク時代の上司と

大久保:実は、協力隊でアフリカへ行くという選択は、多くの人に反対されました。実際、国際機関などへ就職したいと思ったら、経済学の博士号をとっておくことがたいへん有利になることは僕も知っていました。

また、ある官庁の人からは、「東大にまで入ったのだから、その学歴は生かさないと。時代は金融だから、とりあえず金融機関に入って経験を積むべきだ」と、よくわからないことも言われました。

石崎:余計なお世話ですね(笑)。

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