激安3Dプリンタで世界はどう変わるのか? 台湾XYZプリンティングが描く世界戦略

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正直なところ、EMSメーカーが自社ブランドで新しいジャンルに参入することは容易ではない。製造のみでなく開発・設計段階からマーケティングまで知り尽くさなければならない。が、この事業はシュー社長の肝いり事業。彼が直接携わる事業は必ず世界1位か2位のシェアを占めるようにしないといけない。

これから成長していくために一番大事なのは学習すること。いかに早くよりよい人材、よりよい手段を使ってマーケティングをして実行に移し、結果をフィードバックするかが重要だ。私やシュー社長自身も色々と学習している。シュー社長からは朝4時から深夜までメールが来るほどだ。

――3Dプリンタ業界にはストラタシスや3Dシステムズといった巨大な競合がいます。大手とはどのように戦っていきますか。

3Dプリンタ市場は急速に発展している。だから、必ずしも生き残りをかけた激烈な競争がすぐに生じるとは思っていない。現在は、色々な応用分野とマーケットが生まれている中で、それぞれのメーカーが自社のマーケットに合わせた開発を行っている状況にある。PC市場の歴史を見ても、PC自体を開発したのはIBMだが、最終的にIBMは撤退した。しかし、作り手が代わろうともPC市場自体はここまで発展してきた。それと同じように、30年後にどこが3Dプリンタ市場をリードし、どこが生き残るかはまだ分からない。

 3Dプリンタは人類の生活を大きく変える

――今後についてはどのような製品戦略を考えていますか

われわれは今まで携帯電話やテレビなど、コンシューマー向け製品を作ってきたし、そこに強みを持っている。3Dプリンタについても、消費者にとって手ごろな価格の製品を作っていくという方針は今後も変わらない。

1色印刷から始まったわれわれ3Dプリンタは2色印刷になり、最新機種では3Dスキャナもついた複合機になった。将来的には材質の多様化や光造形といった分野を考えている。これにより、これまでではできなかった質感や形のものまで造形できるようになる。材質の応用と操作性、利便性が大事になってくるだろう。

3Dプリンタは斬新な製品だが、使ったことがないどころか、3Dプリンタという概念を知らない人がほとんどだ。だが、1つ確信しているのは、3Dプリンタ技術はわれわれの将来の生活に確実に大きな影響を与えるということ。人類の生活を変えるモノを作っていくことは非常に有意義だと考えている。私にとって3Dプリンタは自分の赤ちゃんのようなもの。うまく育てて将来人々の役に立ってもらいたい。

――成長を続けるうえでの課題は。

課題は正直一冊の本になるくらいある(笑)。繰り返しになるが、EMSメーカーでありながら、自社ブランドも販売をしているので、本当に製造、設計、マーケティング、販売、ブランドなどすべてを知りつくさなきゃいけない。克服するには実行とフィードバックを繰り返し、学習速度を早めるしかない。そこが一番難しいところだけれど、正直言ってやっていて楽しいところでもある。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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