ホンダ、「グレイス」で埋める空白の6年 小型セダンの投入で弱点克服なるか

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新型フィットのHV車では、昨年10月と12月、今年に入って2月と7月に、変速装置やエンジンの制御プログラムの不具合でリコールを実施。3度目となるリコールの際には、生産中の車両出荷を見合わせ、販売在庫の顧客への引き渡しも中止。ホンダも「新型車で立て続けに3回もリコールをした前例はない」 と、異例の事態であることを認めていた。

こうしたことから、フィットやヴェゼルと同じHVシステムを採用するグレイスの発売は延期を余儀なくされた。1日に行われた発表会の場でも、リコールの主因となったHVシステムの品質ついて記者の質問が集中。峯川専務執行役員は「品質体制を刷新し、新体制で技術的な見直しを行ってきた」と説明し、HVシステムを搭載したグレイスについて、「完成した車と認識している」と述べた。

開発責任者である本田技術研究所の広瀬氏によれば、発売を遅らせた6カ月間で、開発チームは栃木県や北海道にあるテストコースや一般道での走行試験を何度も繰り返し、品質の”熟成”に万全を期したという。

カギを握るセダン市場攻略

ホンダは今回のグレイスを皮切りに、今月22日には新型軽自動車「N-BOX SLASH(エヌボックス スラッシュ)など、14年度中(15年3月まで)に合計6車種の新車を投入する予定だ。

もともと、今年度の国内販売計画は約2割増の103万台だったが、一連のリコールで新車投入が遅れたことや市場環境の厳しさもあり、10月の中間決算発表で93万台(前年比9.6%増)に引き下げている。実際、国内販売台数は10月に15カ月ぶりに前年同月を下回った後、11月は前年同月比30.5%減の5万1000台となっている。昨年は秋口から消費増税前の駆け込み需要が高まっていたり、新型フィットが9月から発売されたこともあり、ハードルが高い。それだけに目標達成に向けて、今後いっそうの巻き返しが必要になる。

国内93万台の実現可能性について聞かれた峯川専務執行役員は「目標をしっかり追いかけて進んでいきたい」と語り、足元の厳しい状況を新車の連続投入で挽回したい考えだ。一連の新車が国内販売にどれだけ寄与するかは、グレイスで挑むセダン市場の攻略も大きなカギを握っている。 

(撮影:尾形文繁)

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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