(第42回)企業改革の役割を外国人に期待する

✎ 1〜 ✎ 41 ✎ 42 ✎ 43 ✎ 最新
拡大
縮小


 実は、この方法は、イギリスやアイルランドですでに行われ、その実効性が証明されている方策である。

イギリスにおいて、これは「ウィンブルドン現象」と呼ばれた。アメリカや、ドイツなどヨーロッパ大陸の金融機関が進出し、それまでシティを牛耳っていた人たちとは異質の専門家が入ってきた。それによって、イギリスでは現代的な先端金融が主力産業となったのである。

アイルランドの場合は、政府の積極的な外資誘致政策により、マイクロソフトやグーグルなどアメリカのIT企業が進出して、ヨーロッパ総支社的な現地法人をアイルランドに置くことによって、それが実現された(アイルランドは現在、金融機関の救済が問題になっているが、IT産業が強いことに変わりはない)。

他国で教育された人材を使うのだから、教育費分を負担するのは当然だ。つまり、給与水準はかなり高くする必要がある。この目的にとって、円高である今は好機である。円の価値は07年に比べてさえ5割ほど高くなっている。

将来、円安になり、日本で働くことに経済的な魅力がなくなってからでは手遅れだ。外国人の専門家を日本に招くのに、あまり時間的余裕はないのである。
(撮影:尾形文繁)

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2010年12月4日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT