王道がダメなら、変則的な戦法でやればいい 原田曜平×瀧本哲史 対談(後編)

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原田:中国の若者研究を並行して初めてからも同じようなことを感じました。中国ももちろん少子化が進んでいますが、一人っ子政策が適用されてるのは大都市部だけ。全体の人口が13億人いる中で、20代だけでも2億何千万人いるし、10代の子も同じくらいいる。だから、最初は「一人っ子政策の国で若者を見るなんて、まったくおいしくないなあ」と思っていたのに、実は視点を変えてみるとおいしいんです。なんだかいつの間にか自分と時代の流れが合ってきたというか。

瀧本:大会社って、試しにやらせてみて、おいしいとわかったら、スッとハシゴを外して、「原田君もういいよ、あとはこの部門でやるから」みたいなことがたまにありますが、それはないですか。

原田:少なくともうちの会社ではなかったですね。若者研究というのは、いろいろなコツや知見が必要なものなので、ほかの人がすぐにとって変わることは、そもそもジャンル的にできないんだと思います。また、仮にもしそうなりそうだったとしても、犬みたいに電信柱におしっこして回っていたので、縄張りに僕の匂いがついてしまっていたように思います。どういうことかというと、仕事で得た知識を本やメディアを通じて発信していくと、自分がその専門領域の人と社内外ともに認識されるでしょう。大組織は、異動・交代・代替可能な人員で成り立っていることを基本的には前提にしていますが、それを覆す。

わかりやすい旗を掲げるのが大事

原田:ある時、ある中国の専門家にこう言われたんです。「原田さん、批判が多くたってね、とにかく自分の旗を立てておくのが大事なんですよ」って。つまり「自分はこういうことをしています」という旗を目立つように立てておけば、そこに情報も集まってくる。「若者のことに詳しいですよ」という旗を立てておくと、新聞記者が取材に来て、「今、ヘアワックスの市場がものすごく縮小してるんですよ。これについてどう思いますか?」と自分の知らなかった情報も教えてくれる。そして、さらに自分の知見は増える。確かにそうだと思って、それから縄張りを意識するようになったんです。

瀧本:博報堂は「タレントさん、まず自分でドサまわりしてきてください。売れ始めたらちょっと考えますけど」みたいな。

原田:外部からどう見えるかはわかりませんし、やはり会社ですから、全てがそうではないと思いますが、いろいろな会社とお付き合いさせて頂いて感じるのは、良くも悪くも個人の自由度がかなり尊重される社風であることは間違いありません。まあ、僕も日々実感していますが、実は「自由」とは最も厳しいことでもあるんですけどね。

瀧本:原田さん、独立はしないんですか?

原田:こんな不安定で流動的な時代ですから、全ての社会人にとって、どんな選択肢であっても排除すべき時代ではないと思います。が、今のところは特にそうしたことは考えたことはありません。ただ、いつになるかはわかりませんが、いつかは大学で先生をやりたい、とは思ってるんです。

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