セブンが怒涛の参入、「ドーナツ戦争」勃発か コンビニの巨人は、年6億個の販売を目指す

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ローソンも今春からドーナツを実験的に販売している

ライバル各社も黙って見ているわけではない。

ファミリーマートでは昨年から、デニッシュなどの甘いパンを拡充。さらに6月ごろから約10店舗で、セブンと同様にレジカウンターに置いた専用ケースでの試験販売を始めている。「デニッシュと比べ、まだあまり同時購入率が高くないので、現在はパン売り場などでの展開を考えている。が、今後の動向を見ながら、レジ横の本格販売もしていきたい」(赤荻達也・商品本部FF・パン・デザート部長)。

さらにコンビニ2番手のローソンも、今年の春から同様の実験を行っている。「サンドイッチなどと比べて、コーヒーと一緒に買う人が多い」(同社)と手応えを感じているようだ。コーヒーと同じように、コンビニ業界全体に、「レジ横のドーナツ」が並ぶ日も近いかもしれない。

 最も戦々恐々としているのは専門店であろう。ダスキンが運営するミスタードーナツは、「ドーナツに触れる機会が広がれば、結果としてうちにもプラスになるはず」(同社)と余裕を見せる。専門店なだけあって、店頭には常時40~50種類のドーナツが並び、生地から店内で調理している。コンビニにはないこだわりがあると自負し、ゆっくりと座って食べられるスペースがあるのが大きな違い、と主張する。実際にコーヒー市場でも、カフェの客足に影響はほとんど出ていない。

味はまずまず。安く、規模はダントツ

手前がセブンで、奥がミスドのドーナツ。見た目は似ている

ただ、ローソンやファミマで実験段階の商品も含め、コンビニ勢とミスドのドーナツは、見た目がそっくりなものも多い。コンビニドーナツの味も悪くない。また同種類の商品を比較すると、定価ではコンビニの方が数十円安いものが多い。セブンの鎌田本部長も「間食なので値ごろ感は意識している」と断言する。

さらに圧倒的に違うのは規模だ。コンビニは大手3社だけで、国内に4万もの店舗がある。が、対するミスドは、3月末時点で1350店。ドーナツの本格展開がコンビニに広がっても、何も影響がないとは考えにくいだろう。

 これまで、総菜ではスーパーの顧客を、レジ脇のチキンではファストフード利用者を、そして入れたてコーヒーでは缶コーヒー愛飲者を取り込んできたコンビニ。セブンの参入を機に、熾烈な戦いが新たに始まりそうだ。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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